からすや食堂が仮設での営業を終了

東日本大震災の被災地で最初にオープンした仮設商店街は、いわき市久之浜の浜風商店街。震災直後、放射能や人口減少の問題に直面した上、学校敷地内を商店街として利用するための調整に時間がかかったにも関わらず、最速で商店街を開設できたのは、まちを何としても復活させたいという熱意の賜物だったのかもしれない。

食料品店、酒屋、魚屋、洋品店、電気屋さんに駄菓子屋さんと地域密着のお店が多く出店した浜風商店街で、被災地外からの訪問客でも誰でも入れる(バス視察で来た人が電器店で冷蔵庫を買い求めることはないだろうといった程度の意味)上、味よし、コスパよし、ご主人・奥さんの人柄もよしで人気を集めてきたのが「からすや食堂」さん。

震災前に店があった場所から200メートルほどの場所に建設中の新店舗の完成が近づき、準備等のため仮設店舗での営業を終える直前にギリギリセーフで訪ねることができた。

仮設店舗のからすやさんで食べるおそらく最後となるものとしてオーダーしたのはカツカレー。シェアして食べた羽根つき餃子はド定番として、一緒に行った仲間たちはチャーハン(これも美味しい)、チャーシューメン(ラーメン類はすべてが看板メニュー)など、からすや食堂ならではのメニューを注文。

「まったく、トンカツ揚げるとこからやんなきゃならないようなものを頼むなんて」という声もあったが、あまり心配はいらないと思う。震災の翌年に訪れて、ご主人に話を聞いたとき、「仮設店舗で困ること? そうだなぁ、メニューを増やせないことだな。震災前の店のメニューはいまの3倍はあったんだよ」といっていたからだ。お客のどんな注文にも応えるよ、との自信がなければメニューを増やしたいなんて言葉は出てこない。

店内で見つけたいつもと違うもの

驚いたのはこのホワイトボード。これまではいつ来ても「6月の休み、なし」「7月の休み、なし」とほぼ無休状態を示していたボードに、3月24日〜4月上旬までという長期の休みが記されていた。

とりもなおさず、新店舗での開業準備のためということなのだが、この表示を目にしてあらためて、ほぼ無休で営業されていたからすやさんのスゴさを思った。

新店舗の設計は久之浜で支援活動をずっと続けて来た大学教授の先生。3月下旬には外構工事を急いでいた。

からすや食堂さんのカウンター席には、震災前の町の写真が飾られている。かつて坂の途中にお店があったからすや食堂さんは、近所の人と坂道会というグループをつくって、町の行事などに関わっていたのだそうだ。ご近所同士が仲良く過ごしていたなつかしい光景。少し離れた場所での営業再開にはなるが、新生からすや食堂さんが、変わらず町の元気の源であってほしい。