初めてのお茶会に咲いた笑顔の花

3月30日は旧暦のひな祭り。この日、陸前高田の栃ヶ沢アパートの集会所では、手作りのおひな様を眺めながらのお茶会が開かれた。

おひな様は栃ヶ沢アパートに暮らすお茶の先生が作ったもの。先生のお宅は津波の被害を受け、おひな様もお茶道具もみんな流された。この日飾られたのは、先生が孫っこのために作って、震災後に先生のお宅に里帰りしたおひな様だ。お茶の道具も震災後に先生が少しずつ買い足して行ったもの。先生の思いを知った方から支援してもらったものもある。

先生の思い。それは、再びみなさんにお茶を教えたい。みなさんとお茶会を開きたい。震災で何もかも流されてしまった町で、お茶会を復活させたいというもの。

前日の準備の時には、「何人くらい来てくれるかねえ」とちょっと落ち着かない様子もあったが、当日にはたくさんの人が集会所のお茶席を訪れた。「支援してもらったものなのよ」と和装で来てくれた人もいた。

「毎朝ラジオ体操に出ている人くらいかなあと思っていたんだけど、ふだんあまり顔を出さない人も来てくれた。小さな女の子まで来てくれて、おひな様らしくなった」

お茶を立てる先生の表情がすべてを物語っている。

お茶を頂いた後は、おひな様らしく白酒も楽しんだ。この土地の白酒はどべっこ。地元の酒蔵酔仙の酒粕を使ったどぶろくで、ほのかに香る酒精が香しい。どべっこで少し気持ちよくなって、おしゃべりにも花が咲く。みんなでおひな様の歌もうたった。

「今回は最初だから、お手前の作法とかは言わないの。これから少しずつ、楽しみながらお作法も習ってもらって、栃ヶ沢の人たちは礼儀がしっかりしているって褒められるようになるといいねえ」

数カ月前、県が企画したテレビ番組のインタビューで、「早くこの集会所を使えるようにして下さい」と先生が話していたのも同じこの場所、この和室だった。自治会ができて、ようやく集会所を住民が使えるようになった。先生の夢も実現に向けて動き始めた。

昭和5年生まれの先生は、コミュニティづくり、まちの再興のフロントランナーのひとりだ。