陸前高田市内で最初に完成した復興住宅、市営住宅下和野団地では、第4回「高田に輝(ひかり)の花を咲かせよう」が開催された。
7階建ての公共住宅の南側、いずれかさ上げ工事で中心市街地とつながることになる場所に、手作りの光のページェントが繰り広げられた。
北側の駐車場からぐるりと回り込むと、光のゲートが出迎える。
ゲートをくぐった一番奥には、夕方、設置しているのが見えた光のオブジェが圧倒的な存在感でそびえ立つ。
内部にミラーボールが組み込まれたオブジェから放たれる輝(ひかり)は、かさ上げ工事が続けられる現場をも照らしていた。
ゲートから光のオブジェまでの間には、キャンドルで形づくられた文字や切り絵の燈籠が並ぶ。その1つひとつが声をあげたくなるような素敵な造形。「下和野の灯火にはぜひ行くつもりよ」と、昨年仮設住宅から公営住宅に移った知り合いの多くが言っていた意味が分かったような気がした。
手が込んでいて素晴らしくて、それでいて近くで見ると手作りのあたたかさが伝わってくるページェント。
灯火でつくられた文字は「輝の花」と記されていた。ゲートや光るベンチはペットボトルなどで製作されたものだ。
でも、それだけではない。美しい光のページェントというだけではなかった。
会場前の団地1階にある「市民交流プラザ」には多くの人が集まって立錐の余地もない状況。あちこちでお茶っこしながらの話の輪が広がる。久しぶりに会った人たちが言葉を交わす。かつて近く住んでいた人、いまでは住居だった場所がかさ上げで埋もれてしまった人たちだ。この日への思い、なつかしさだけではない、切なさとかいろいろな気持ちがあったに違いない。
ひっきりなしに来場者が訪れる駐車場の誘導員には、地元で活動するNPO団体の人たちの顔もあった。もちろん、その人たちの中にも被災した人もいた。
会場に輝(ひかり)が広がる。会場の外へも広がっていく。かさ上げ工事が進む場所は単なる工事現場などではなく、6年前のこの日まで町があった場所。日々の暮らしがあった場所。そして多くの人たちが命を失った場所。光のオブジェから放たれる輝(ひかり)が照らしていたのは、そんな場所だった。
今年は下和野団地前で開催された「高田に輝(ひかり)の花を咲かせよう」だが、昨年までは近くにあった小谷園さん前で開催されていた。小谷園の仮設店舗の建物はいまも残されているが、かさ上げ工事で店舗は高台の仮設店舗(震災以降3度目の仮設店舗になるそうだ)に移転した。まちはどんどん変化していく。
どんなに町の状況や景色が変わっても変わりようのないものがある。中高生や若者たち、住民やNPOの人たちが参加して実現したこの日の輝(ひかり)が照らしていたのは、変わりようのないものの未来の姿なのではないだろうか。