絆はいまも損なわれることなく、ここにある。
震災遺構として保存されることになっているタピック45(陸前高田市)に、キャンドルの灯がともされた。
巨大な防潮堤のすぐ近く。海風が強いこの場所で、夕暮れ前から多くの人たちが灯火の準備を行っていた。
話を聞いてみると、東京など市外・県外からやってきたボランティアも多い。地元の女性会やNPO団体の人たちも加わって、キャンドルに灯をともしていく。
しかし海風が強い場所だけに、キャンドルに灯をともすのもなかなか大変な作業。風除けのためキャンドルはガラス瓶などの中に入れられていたが、それでも瓶の口から吹き込む風でキャンドルの火が消えてしまう。
だからガラス瓶の外側に、牛乳パックを使ったカバーを掛ける。カバーを掛ければ火は消えにくくなるものの、着火してカバーを掛ける前に消えてしまうものもある。
何度も繰り返してキャンドルに火をつけてガラス瓶に滑り込ませたりしているうちに、キャンドルの芯が取れてしまったりもする。海辺で灯をともすのは容易なことではない。
それでもこの日、津波に襲われたこの場所で灯をともしたいという思いは、主催した陸前高田ふるさと応援隊、女性会のみなさん、ボランティアスタッフたち、そしてこの灯火を支援してきた人たちにとって特別だ。
牛乳パックを使ったカバーは支援のために全国から送られてきたもの。これまでに送られてきたものを大切に保管してきたものが今年も使われた。ひとりひとりの思いが集まって、今日の日の灯火になった。
カバーを掛けると、キャンドルの灯火はいっそう美しく輝く。やさしく、やわらかな光で会場が包まれていく。
会場中心のキャンドルで作った文字をどう読むのか、まだ辺りが明るいうちには「何て読むんだろう」という声もあちこちで聞かれたが、暗くなるにつれて光の文字の意味するものがはっきりと見えてきた。
「あいをつなぐ」
あいはつながることで明るく輝く。つながりが増えればそれだけあいの輝きは増していく。
会場では温かい豚汁のふる舞いもあった。豚汁をすすりながらの会話の輪が広がっていく。誰かが誰かを紹介して話の輪に加わっていく。女性会の人たちが配って回ってくれた豚汁のぬくもりが、人と人をつないでいく。
灯火は、真っ暗なまちのほんの一角を照らしたに過ぎないかもしれない。でもその光はたしかなものだった。月の光の明るさと同じく、集った人をあたたかく照らしていた。
キャンドルの集いは、十四夜の月が夜空高くのぼるまで続けられた。