海岸沿いに連なる赤いランプ
午前6時、福島県いわき市四倉の国道6号線。6号線は東京から福島県沿岸部を経て宮城県仙台市に至る一級国道だ。とはいえその中間付近、福島県浜通エリアはかつて、どちらかというと交通量も少なめでのどかな道路だったらしいのだが。
東日本大震災以後、6号線は復興事業を支える基幹となった。原発事故の収束を進めるための道になった。
いわき市北部の四倉付近で車線が片側一車線に減った後は、黎明の国道にテールランプやブレーキランプの赤い光の列が長く連なる。
地元の人の話では、この車列の多くが原発や除染作業の作業員が乗った車なのだそうだ。いわき市の中心部から福島第一原発までは50km以上ある。事故原発の近くには住める場所は限られているため、今でも多くの作業員がいわき市中心部やさらに遠方から原発方面へ通っている。早朝からの渋滞は、震災と原発事故後の日常的な風景。しかし、震災前からは一変してしまった風景なのだ。
交通事故も急増
地元の人の中には「朝夕の渋滞にはもう慣れてしまった」と話す人もいるが、慣れることなんかできないというのが交通事故の増加だ。避難区域から避難者や作業員で交通量が増加したことで、交通事故の件数や死傷者数が震災後急増したらしい。2014年には、交通事故犠牲者の急増を受けて、いわき市が異例の緊急事態宣言を発令したほど。
私自身ここ1年半ほどの間に5回ほどいわき市を訪ねているが、交通規制が入るほどの大きな事故を3回目撃した。いずれも国道6号線。うち2回は四倉から中心部に向かう片側2車線の直線区間。事故など考えられないくらい見通しもよく走りやすい道路での事故だった。どちらの事故でも、一体何が起きたのかと思うほど大破した2台の車が、それぞれ逆方向を向いて上り下り1車線ずつを塞いでしまっていた。もう一度はいわき市の中心部。そこそこ交通量も多く、スピードは出せそうにない場所で、やはり大破した乗用車が車線を塞いでいた。
どうして事故が増えたのか。たしかな理由は分からないが、地元以外の人が増えたからだと話す人が多い。歩行者が横断しようとしても停車しないなど、以前では考えられないほど交通マナーの悪い運転者が増えているとも。
いわき市でも、震災からの復興は徐々に進んでいる。新しい町がまさに生まれようとしている場所もある。道路交通に関する安全レベルが復旧するのはいつ頃のことだろうか。