18歳でデビューし、「てぃーんず ぶるーす」、「キャンディ」、「シャドーボクサー」と3曲連続でオリコン入りを果たし、その才能を「早熟の天才」と評された当時。アイドル扱いに反発をしつつ、骨太なアーティストとして数多くの楽曲を作りづつけてきたミュージシャン。歌詞に織り込むメッセージは、デビューから一貫して「やさしさ」。広島県出身ゆえ、平和を願う心は誰よりも強い。成人した二人の息子は、やはり音楽家の道をたどり始めている。世界を舞台に活躍し続けるミュージシャン原田真二さんに、音楽にこめた思いをお聞きしました。
原田 真二(はらだ しんじ)
1977年10月、18才で「てぃーんず ぶるーす」でデビュー。
11月には「キャンディ」12月には「シャドー・ボクサー」と3ヵ月連続でシングルを発売。3枚全てが同時にオリコンベスト20入りするという日本音楽史上初の快挙を成し遂げる。
翌年に発売されたデビューアルバム「Feel Happy」は、史上初の初登場第1位を獲得し、4週間連続トップを独走。その後、平和への想いを託した楽曲を積極的に発表し始める。
また他のアーティストにも多くの楽曲を提供。その数は200曲以上となり、メロディーメーカーとして揺るぎない地位を築き上げた。1999年、国際環境会議に参加、同会議のレセプションにて演奏を行う。1995年、2004年に東京の公立小学校2校の校歌を作詞・作曲。
2000年より心の環境整備を訴える環境チャリティー「鎮守の杜コンサート」をスタートさせ、これまでに、伊勢神宮、明治神宮、厳島神社を含む全国の神社でコンサートを行い、2005年その活動をNPO法人化し、NPO法人ジェントルアースを設立した。
2004年7月、フランス、カンヌでの国際芸術祭で演奏。 2006年11月、ダライラマ氏をはじめとするノーベル平和賞受賞者を招いた広島国際平和会議で演奏。2007年1月、元アメリカ副大統領アルゴア氏制作 の環境映画『不都合な真実』の日本語版エンディングテーマを担当。同レセプションにて演奏。 2007年2月、メキシコ、カンクンにて元アメリカ大統領ジミーカーター氏の交流会に参加。 2006年より毎年ニューヨークでのPeace Concertを行い、2007年9月・10月にはニューヨーク国連本部に招かれライブを行った。 欧米・フィリピンでの活動も行い「愛と平和」の大切さを音楽を通じ地球上に届ける活動を展開している。
平和への思い、広島が母体となった音楽活動
――原田さんが出演されたチャリティーコンサートへ先日伺い、変わらぬ歌声に感動しました。デビュー当時からテーマとか、おっしゃっていることに一貫性がありますね。
18歳でデビューしてから、ずっと「音楽で世の中にやさしさを復活させたい」という 思いで続けています。日本はメッセージ性のある音楽はあまり好まれませんが、欧米では全面に出して活動する人も多い。自分だけがよければいいという考え方ではなく、周りを思いやる気持ちこそが、平和をつくる一番の原動力です。たとえば、ビル・ゲイツは一代で富を築きましたが、社会へ何を還元していけるかという生き方をしています。そういうことができるやさしさが必要だと思います。今年も8月5日にNYでチャリティーコンサートを開催します。日本は相手を尊重する和の文化をもちます。少し前に「大和~YAMATO The Global Harmony~」という曲も作りました。調和を重んじる大和の心を、利己主義のまんえんする世界中に伝えて行きたいのです。
――広島ご出身というので、やはり平和への思いを強く感じます。
ぼくの小学校は、原爆投下された場所の目の前で、最も爆心地に近い小学校でした。ですから、小さな頃から「平和」について当たり前のように考えていました。音楽を始めたのは中学生の頃、洋楽を聴いて影響を受けました。でも、その当時から気持ちは一緒です。音楽の力ってすごいでしょう?歌詞の意味がわかるとかわからないではなく、「想い」がそこにあれば世界中どこでも気持ちが伝わるものなんです。
――ピアノは独学で演奏できるようになったというのは本当ですか?
はい。 実は小学生時代に両親がクラシックを教え込みたくてピアノは家にありました。でも、その頃は全然関心がありませんでした。それが、中学生になってからギターを弾くようになって楽器を演奏することが楽しくなりました。それから、高校へ進んで軽音楽部にも入りました。そのころからピアノに夢中になりました。目覚めないと、本気でやる気にはならない。練習という気持ちではなくて、触っていないといられないくらい好きでした。1日1時間は必ず弾いていましたね。
――その集中力はうらやましいですね。その力はどんなふうに培ってこられたんでしょう。
ぼくは中学校時代に、「考え方教室」というところに通って、どう考えればプラス思考の暗示をかけられるかを教わりました。嘘みたいなんですが「ぼくは出来た!これぜんぶおぼえてしまった!そして100点を取れた!」とか、できるだけ具体的に、いいイメージを過去形で思い描くんですね。そういうポジティブさが根底にあると、本当にそのイメージが実現できるようになります。まわりを幸せにする想いであればぜったい不可能なものはない。中学3年生の時に、その集中力をもって勉強して、進学校へ進みました。でも、その後は集中力は音楽のほうに傾倒したので勉強はサッパリでした(笑)。
ちょっとした言葉がけが変化をうみだす
――原田さんはご自分のお子さんにも、きっとやさしさをもって接してこられたのでしょうね。父親として叱ることはありましたか?
叱ることはもちろんありましたが、ぼくは必ず叱っている理由を言葉で説明してきました。感情にまかせて「馬鹿!」と言い放ってしまう親御さんがいますが、それって実は恐ろしいことを含んでいるんですよ。言葉にしてストレスを発散したつもりになりますが、それは言った自分にも跳ね返ってくるのです。逆に、ポジティブな言葉を発すると、まわりを幸せにしていくことにつながる。ダメな子に、「ダメだダメだ」と言っても認識させることなどできないし、逆効果。その子を伸ばそうと思うなら、いいイメージを与える言葉がけをするんです。つまり、言葉ひとつで親子の関係は変われるものなんです。
――すごく身につまされるお話です。原田さんは「心拓塾」という親子一緒に学べる教室の理事もされていらっしゃいますね。そこではどんなことをテーマにされているのですか。
いろんな分野で活躍している、さまざまなプロが考え方を伝授する場です。麹町のある学園をお借りして毎月1~2回開催しています。ぜひこうしたイベントにもご参加ください。
また、英語から右脳を開発し、世界レベルのVocal力をつける「Professional Vocal Seminar」も主催しています。ぜひチェックしてください!
――ところで原田さんのデビュー当時、これまでにないジャンルの音楽で、若くして成功されていらしたし、やっぱりいろいろ妬まれたこともありました?
デビューして1~2年後で壁にぶつかって、聴いてほしい歌があるのに、キャーキャー騒いで(笑)聴いてもらえなかったりして、悩みながら歌ってましたね。でも、当時の自分が歌っているVTRとか見ると、首を絞めたくなったりしますね(笑)。人の反応は、実は自分自身を映す鏡なんですね。もっとキャーキャー言わせちゃおう。こっちから好きだよってコミュニケーションしようと思って、悩むのをやめ、思いっきりコンサートを楽しみ盛り上げました。そうすると、すごく僕が聴いてほしい歌を聴いてくれるようになりました。
愛してはじめて愛されるんですよね…。
――聞いてほしい歌を、最近では本当に歌われていらっしゃるのではと思います。
そうですね。平和を願う心は、「優しさ」にも通じますし、環境問題にも通じるものです。一人の変化は、身近な人に飛び火し、やがて社会へと広がります。誰でも大きな可能性と責任があると思うのです。意味のない人や、人生なんてないのです…。音楽でその「優しさの火種」をまいていきたいのです。
英語ができると、世界に通じる
――原田さんの息子さんのお話、大変興味深いのです。お二人とも大きく成長されたということで現在は何をされていらっしゃるのですか?
長男は25歳で、ショーンという名前でミュージシャンとして歩き出したところです。次男は19歳。今、NYU(ニューヨーク大学)でミュージックテクノロジーを学んでいます。二人とも意図していたわけではありませんが、音楽の道へ進んでいます。
世界に通じる英語教育を受けさせたくて、二人はインターナショナルスクールへ通わせました。もちろん学費のために、親は必死で働きましたが(笑)。
――お二人の習い事は、どんなことをされていたんでしょう?
ぼくが剣道をやっていたので、日本の武道を何か身につけてほしいと思い、日本拳法の教室に行かせました。ピアノと水泳もやりました。そうそう、日本語を忘れてはいけないということで、国語と算数を選択して公文にも通っていました。
――英語にこだわられたのは、何か理由が?
実は、僕の親戚はアメリカへ移住した者が多く、そのうえ、父も母も学校の先生をしていました。父は中学校、高校、大学講師として英語を教えており、演劇部で演出もしていました。そして英語塾を自宅でやっていたこともあり、英語が日常で、普通にあった環境でした。日本語だけでなく英語を話せるようになれば、世界とも臆せず渡り合っていけます。息子は二人とも、日本語より英語を話すほうが楽なようです。
――では、今の子どもたちへ何かメッセージをいただけますか。
だらだら生きるという風潮がありますが、フリーター、ニートなど彼らなりの心理があると思いますが、そういう世の中を創りだしているのは大人であり、そして、そういう情報を生み出しているのはメディアの責任です。逆に僕らが子どもたちから学ばないといけないことがあると思います。伝えていかないといけないのは、命の大切さ、モノの大切さ、そしてその根底にある「やさしさ」です。小さい頃だけじゃなくて、中学生以上になっても絶えず学んでいけるようなシステムも必要でしょう。人間として生まれたことの意味も理解できるのではないかと思います。日本は相手を尊重する文化。自己主張の文化は、戦争をうみます。まず相手をわかろうとする文化は調和を実現します。今こそ世界中に、大和の心、やさしいエネルギーを発信しましょう。まずは自分がやさしさを表す少しの変化を起こすことです!!
僕は音楽でその想いを世界に届けて行きます。あなたの力が必要です。やさしさあふれる未来の地球を子どもたちに手渡しましょう!!
編集後記
――ありがとうございました。原田真二さんは、私の姉が大ファンで、いつも隣室から流れてくる歌は否応なく耳に入ってきて自然に口ずさめるように。それは30年近くたっても、メロディを聞くだけで全曲ソラで歌えることに私自身がビックリ。いい音楽は、身についているものなんですね!デビュー当時から、少しもぶれることなく「やさしさ」をテーマに歌い続ける原田真二さん。荒んだ時代にこそ、ひとの心をあたためる歌をこれからも作り続けてください。
取材・文/マザール あべみちこ
価格 : 3,000円 発売日 : 2007年8月15日
発売元 : WAVE 品番 : XNRW-10002