どうしてもっと厳しく追及されないのか不思議でならない。
再稼働に向けての準備が進められている関西電力高浜発電所(高浜原発)4号機で、2月20日午後、1次冷却水が漏れるトラブルが発生。関西電力が同日付けプレスリリースで発表した。
高浜原発は「加圧水型」と呼ばれる原子炉で、タービンを回す高温水・蒸気は、1次冷却水、2次冷却水の2系統に分かれている。核燃料に直接触れて高温高圧になった1次冷却水から、蒸気発生器という炉心より大きな装置で2次冷却水に熱を移し、発生した高温高圧蒸気でタービンを回して発電する。
タービンを回す2次冷却水は核燃料に直接触れないので放射能に汚染はされないが、1次冷却水は核燃料に触れるから汚染されることになる。
今回発生したトラブルは、汚染された1次冷却水が漏れて警報が発生したということなので、ことは極めて重大だ。
にも関わらずメディアの扱いは覚めたものだった。
朝日新聞もNHKも時事通信も、トラブルによって再稼働の日程に遅れが生じる可能性を伝えてはいるものの、出来事の内容については関西電力が発表したリリースをなぞるような形にとどまっている。汚染された1次系冷却水が漏れたこと自体が大きな問題であるはずなのに、汚染度が国への報告基準を下回るものだったと関西電力の発表を受け売りして、まるで不問に付しているかのようだ。
汚染された冷却水が漏洩した場所が、格納容器内ではなく、原子炉建屋に付随して建設されている原子炉補助建屋だったことを問題視する指摘すら見当たらない。原子炉補助建屋とはいうものの、つまりは格納容器という「壁」で守られた場所ではないところで、炉心に触れる汚染された冷却水が漏洩したというのにだ。
事故原因の解明と対策が進まないまま再稼働が実施されると、運転中の1次冷却水が同じ箇所から漏れ出さないとも限らないのだから、「検査や再稼働の日程に影響が出る可能性(NHK)」とか「再稼働に影響する可能性(時事通信)」とのんびり構えている場合ではない。
このトラブルが起きたのが2011年3月11日以前だったとしたら、間違いなくもっと大変な騒ぎになっていただろう。東京電力の原発事故が過酷すぎるから放射能に対する日本人全体の感覚が麻痺してしまったのか、あるいは再稼働ありきの報道姿勢なのかわからないが、関西電力や国がこのトラブルにどのように対応していくのか、今後の成り行きはしっかり注視していく必要があるだろう。
INESの国際原子力事象評価尺度では、今回のトラブルはどのレベルに相当するのだろうか。同じ関西電力の美浜発電所3号機2次系配管破損事故は、安全に安全に影響を与え得る事象「尺度以下0+」だったという。今回の漏洩は1次系だから状況はさらに重い。もんじゅのナトリウム漏れも2次系だったが、INESでは「レベル1・逸脱」と評定されているようだ。
漏洩の量は34リットルと比較的少なかったようだが、適切な対策をとらずに稼働すると極めて過酷なトラブルにつながる可能性もないわけではない。トラブルを次に活かす安全対策を切に望むばかりだ。