想像以上に大きい。石巻市が整備を進めている津波避難タワー。その第1号として市東部の渡波地区に2015年3月に完成した「大宮町津波避難タワー」は高さ約13メートルの鉄骨造。冬期の気温に考慮して、高さ10メートルの位置に約120平方メートルの居室も設けられている。
津波避難タワーというと、単なるヤグラ状の建造物を思い浮かべてしまうが、大宮町津波避難タワーは印象がだいぶ違う。居室には水や食料も備蓄されているほか、太陽光発電パネルも設置されているので、数時間の一時的な避難だけではなく、救出に時間がかかるケースも想定されているように思われる。市のホームページによると、収容人数は屋上部分と合わせて214人だという。
津波避難タワーには入り口の階段が2カ所に設置されているが、どちらも普段は施錠されている。震度5弱以上の地震を感知すると自動的に解錠されるキーボックスがあるほか、階段のドアは非常時には板部分を壊して中に入ることもできるようだ。
階段の傾斜が緩やかなのは、高齢者や体の不自由な人への配慮なのだろう。
施設の規模も設備も充実している津波避難タワーだが、地域の人たちがこの場所まで移動して、さらに鉄階段を上らなければならないことを考えると、あくまでも最悪の事態から逃れるための次善の策であるのは言うまでもない。
津波発生時には津波浸水域の外の、より高い場所に避難することが基本ですが、
石巻市では、沿岸部において、浸水域外への避難が遅れた市民の安全を確保する必要があることから、津波一時避難場所の整備を進めています。
石巻市では津波避難タワーの他、津波避難ビルの整備も進めていて、現在津波避難タワーは3カ所、津波避難ビルは21カ所になっている。
立派な津波避難タワーを目にすると、ここまで逃げるのにどれくらいの時間がかかるかとか、お年寄りの避難をどうするか、外出先で地震にあったらどうするか、そもそも地震や津波以外の災害への備えはどうかなど、防災についていろいろと考えさせられる。
災害が現実のものになった時の避難場所としての実際の機能ばかりでなく、見る人に災害について考えさせる効果があるのは間違いないだろう。