福島第一原子力発電所の作業現場で働く人たちが身に着けている、白いタイベックの防護服やフィルター付きのマスク。いまや、事故原発を象徴するユニフォームのようになっているが、このスタイルは作業環境として極めて過酷なものだ。
暑いさなかには熱中症のリスクがある。寒くなって防寒着を着るとさらに動きにくくなる。雨の日にはタイベックの上にアノラックの雨具まで着こまなければならない。
その上、タイベックは2枚重ねで着用していて、汚染された現場での作業を終えて移動用の車に乗る時には外側の1枚を脱ぐことになっている。さらに、車移動の際には靴カバーまで着用する。
現場の作業員の安全を守るための装備が、現場での作業の妨げになる。作業効率の問題以上に深刻なのは、動きにくい上、視界も制限されるこのスタイルが安全上の妨げにもなりかねないこと。現場での死亡事故や救急搬送される出来事の背景に、劣悪な作業環境があるという指摘も根強い。
そんな環境の改善に結びついてほしい発表が行われた。重装備でなくても、一般の作業服で移動したり過ごしたりできるエリアが拡大したというのだ。
地図部分をさらに拡大してみる。よく見ると今回拡大したのは、敷地全体からするとごくわずかのエリアでしかない。それでも、入退域からそれぞれの企業棟、そして免震重要棟までが一般作業服で移動できるようになったのは、現場の人たちの負担を大きく軽減することになるだろう。
一般作業服で過ごせる場所の拡大は、除染とフェーシング(舗装や法面への吹付け施工で地表部分の放射性物質の影響を抑えること)の進展によるものだろう。しかし、敷地全域でのフェーシングが完了しているわけではないので、今後もきめ細かな線量測定で安全を確認しながら、一般作業服で活動可能なエリアを少しずつでも拡大していってほしい。