気温が下がり、過ごしやすくなる秋はトレッキングなどアウトドアでの活動に適した季節です。そこで、森や山など、陸上にいる危険な生物について、数回に分けてご紹介していきます。4回目の今日は「イノシシ」です。
イノシシについて
日本にいるイノシシは「ニホンイノシシ」と「リュウキュウイノシシ」の2種で、人が襲われる被害が出てているのはニホンイノシシです。
ニホンイノシシ(※以降「イノシシ」と記載)は北海道と沖縄を除いた全国にいます。多くが標高1,000メートル以下に生息していると言われていますが、なかには2,500メートルを越える高所での目撃例もあります。
体長は100~170センチ、体重は80~180キログラムほどで、全身褐色または暗黒色の剛毛で覆われています。オスは下あごに大きいもので15センチ以上にもなるキバを持っています。
植物のほかにも昆虫やミミズ、カエル、ヘビなども食べる雑食性です。本来は昼行性と言われていますが、人里近くでは夜間にも行動します。
視力はあまり良くなく、だいたい0.1程度と言われています。これは100メートル先にいる人間を認識できる程度のレベルです。代わりに嗅覚や聴覚は大変優れており、特に嗅覚においては犬並と言われています。
イノシシに遭遇してしまった場合には・・・
イノシシは基本、警戒心が強く、人を避けようとします(※ただし、エサをあげるなどして慣れてしまったイノシシは人間を恐れない場合あり)。
しかし、晩秋から冬にかけての発情期や分娩後、子供を連れている時などは攻撃性が強く、急に出会ってしまった場合には、かまれたりするなどの被害が毎年のように出ています。私の知り合いにもかまれたという人がいます。かまれた時の傷がひどい場合には、失血により命を落とすこともあります。
イノシシによる人的被害を避けるためには、人間がいることを知らせて会わないようにすることが重要です。その方法としては、クマ鈴などを身に着けて音で存在を知らせるなどが効果的です。
特にイノシシの糞や足跡、ヌタ場と呼ばれる体表についているダニなどの寄生虫や汚れを落とすために泥浴びをした跡を見つけた際には要注意です。
万が一、イノシシと出会ってしまった場合には、クマやスズメバチなどの場合と同様に、背を向けずにゆっくりと後ずさりして距離を取ります。
イノシシは時速40キロメートル以上で走れる上に助走なしでも1メートル以上の跳躍力があります。泳ぎも得意で数キロメートル泳ぐこともできるといいます。走って水平方向へ逃げるのはまず不可能と考えておいた方がいいと思います。
遭遇した際に石を投げたり棒などを振り回すなどの行為はイノシシを刺激し、さらに危険性が増すので絶対に行わないようにします。特にイノシシが威嚇行動を取っているときには攻撃的な行動はもちろんのこと、急激な動きをしないように気を付けるようにします。
ちなみにイノシシの威嚇行動は「背中の毛を逆立てる」、「前足で地面を引っ掻く」、「歯を打ち合わせて威嚇音を発する」などがあります。具体的な威嚇音としては「シュー」、「カッカッカッ」、「クチャクチャクチャ」といった音を出すそうです。
逃げる際はイノシシの逃げ道を塞がない(登山道やけもの道上で遭遇した場合は道をあける)ようにして安全な場所へ移動します。
避難場所は車や建物などがあればいいのですが、ない場合には、イノシシはクマとは異なり木のぼりなどはできないので、樹木の上などイノシシが上ってこれそうにもない高い場所へ逃げます。そのほかにも、イノシシから見えない物陰に隠れるのも有効と言われています。
イノシシに遭遇する可能性は考えている以上に高い
深い山の奥に棲んでいるイメージもあるイノシシですが、もともとは平野部にいたとも言われており、実は人里の近くにもいる動物です。
個人的な話ですが、今年の夏に箱根の芦ノ湖畔を車で走っていると、まさかここで?というような民家に近い場所で見かけました。
これまでに何度か野生のイノシシを見たことがあるのですが、たいていは車に乗っている時でした。車内にいて安全であるはずにも関わらず、重量感溢れるイノシシの姿を目の前にすると、体が固まるような緊張感を覚えます。
これがもし、歩いている時にいきなり鉢合わせしてしまった日には、頭の中が真っ白になるのではないだろうかと思います。しかし、できるだけそうならないように、日ごろからイノシシに遭遇した時のことを考えて、少しでも冷静に行動できるようにしたいと思います。
万が一、イノシシに出会ってしまった時には、「イノシシの逃げ道を塞がず、背中を見せないでゆっくりと距離を取る。可能な場合には木の上などの高い場所へ逃げる」ようにしたいと思います。
<「陸に生息する危険生物 Vol.5」 へ続く>
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紹介:sKenji