旅人の目と地元の現実

陸前高田の友人に資料を送ってもらいたくて電話で話していた時のこと。ちょっと急ぎでほしい資料だったから、「コンビニとかのポストじゃなくて、本局から送ってもらえないかな」と頼んで、ふと考えた。

陸前高田の郵便局の本局、というか「陸前高田郵便局」ってどこなんだろう。

かつて町だったところはほぼ、かさ上げ造成工事が進められている。郵便局はおろか、仮設のコンビニすらとうに撤退している。

陸前高田で見かけた唯一の郵便局を思い出して聞いてみた。「郵便局って、竹駒の、あそこ? 大隅の方に上がって行く途中の曲がり角の?」

そうだよ。返事はあっさりと返ってきた。こちらの頭の中にあったのは、陸前高田の町から軽く一山(山というほどでもないが)越えた場所にある仮設の郵便局。

竹駒郵便局:陸前高田郵便局郵便分室

何にも知らないんだなと思った。

震災の後、陸前高田に行った時、仮設の市役所がある山(山というほどでもないが)を越えて竹駒と呼ばれる集落に入った時、その場所でさえ津波の被害を受けていたのに驚いていたら、「そうだよ、この川から津波は来たんだよ」と地元の人に教わったこと、それでも、陸前高田の町の中では海から離れた地域だから、スーパーのマイヤとか、ドラッグストアの薬王堂とか、未来商店街とか、ホームセンターのホーマックとか仮設の施設が集中して建てられたことを思い出しはしたが、自分の目線は通り過ぎて行く人間のものだったのだと、思った。

ネットで調べてみたら、陸前高田郵便局という名の施設は、竹駒に越えてきた山手の方に移設されていたが、竹駒の郵便局は「高田郵便局郵便分室」ということだった。郵便は竹駒。郵貯や保険業務は山の方の郵便局ということなのかもしれない。これも、行って、実際に使ってみなければ分からない。

遠くから、ただ眺めているだけでは分からないことがたくさんある。

遠くから、ただ眺めているだけでは分からない現実の中で、その土地の人たちは今日も暮らしている。