明日7月1日は山梨県側にある富士山の登山道、吉田口ルートの山開きです。梅雨明けまではもうしばらくあるものの、7月に入りいよいよ夏山シーズン到来です!
そこで今日は登山を始めようと考えている方や、初めて登る山の計画を立てる際に役立つ「山のグレーディング」についてご紹介します。
山のグレーディングとは?
今回ご紹介する「山のグレーディング」は、登山ルートの難易度評価をランク付けしたもので、4つの県で公表されています。
最初に作成したのは長野県です。同県では山での遭難件数が4年連続で過去最多を更新する事態が続いていました。2013年にはついに300件の遭難が発生、328名の遭難者が出てそのうち74名の方が死亡・行方不明となっています。
増加の一因は「体力の低下を意識しない中高年者」や「山の怖さを知らない初心者」が技術的、体力的にレベルに見合わない登山をするケースが増えていることがあるとのことです。
「登山ルートの難易度を情報提供し、登山者が自分の力量にあった山選びをすることにより、山岳遭難事故の防止に役立てる」。この目的のために2014年、長野県が初めて山のグレーディングを作成し、公開しました。
そして今年に入り、山梨、静岡、新潟の3県においても長野県とともにに開催した「中央四県」サミットでの合意に基づいて作った「山のグレーディング」を公表しています。
山のグレーディングの判定基準について
4県が公開している山のグレーディングは、統一基準に基づいて作成されています。そのレベル評価は「体力度」と「技術的難易度」の2つを元に判定されています。
具体的な判定基準については各県のWEBサイト等に記載されていますが、たとえば体力度の判定について見てみると、登山ルートの「コースタイム」、「ルート全長」、「累積登り標高差」、「累積下り標高差」の4つの要素について、次の式により算出した「ルート定数」を元に1~10の10段階で評価しています。
<体力度判定で使用されるルート定数算出式>
ルート定数=コースタイム(時間)×1.8+ルート全長(km)×0.3+累積登り標高差(km)×10.0+累積下り標高差(km)×0.6
この算出結果を元にルート定数が10以下のコースは体力度1、10を超え20以下は体力度2、そして90を超えたならば体力度10などとなっています。
技術的難易度については、登山ルートの状態(※滑落などの危険性の高い岩稜地帯の有無など)や、登山道を歩く上で求められる技術・能力(※安全なルートを自分で見つけたり、雪の上や岩場の上を通過できるバランス能力など)を元にA~Eの5段階で評価しています(※Aが一番容易なルート)。
■各県が公開している「山のグレーディング」
グレーディングはあくまでも「無雪期(富士山は登山道開通期間)」かつ「天候良好」という条件で作成されたものであり、季節や天候などの様々な要因により、変わってきます。
山のグレーディングの活用方法について
登山ルートの難易度評価は、これまでも市販されている登山ガイドブックなどでも行われていました。
しかし、4県が公表しているグレーディングの特徴は、体力度のレベル分けが10段階と細かいことに加えてその判定基準が明確になっている点、及びこれまでガイドブックが取り上げていなかったと思われるような、比較的マイナーであったり低い山においても基準を示している(※4県で400近い登山ルートの評価判定をしています)点にあると思います。
公表されている資料を見ると体力度と技術的難易度について「マトリックス形式」で表したものと、歩行時間などの詳細情報も記載された「一覧表」があります。
「マトリックス形式」は、自分に合ったレベルの山を探す際に役に立ちます。例えば今年、登山を始めたいと考えている方は、体力度1、技術的難易度Aの山から登り始め、徐々に体力度や難易度をあげていくといいのではないかと思います。
登山経験がある方には、初めて登る山の難易度を調べたり、過去に登った山のグレーディングを参考に1ランク上の山に挑戦するといった使い方もあるかと思います。
「一覧表」は、ルート定数や歩行時間などから登山を計画している山の体力的なハードさを把握するのに活用できます。特に登り下りの累積の標高差は、他ではあまり見かけないデータで、ある程度の登山経験がある方には大変参考になる情報だと思います。
本格的な夏山シーズンを迎えるにあたり、ご紹介した「山のグレーディング」などの情報も参考にして、安全な登山を楽しみたいですね♪
参考WEBサイト
Text:sKenji