5年前の2月28日。北海道から沖縄県までの広い範囲で、地震の揺れを感じなかったにも関わらず津波が観測されました。
津波は、2010年2月27日15時34分頃にチリ中部沿岸で発生した地震によるものです。地震の規模はマグニチュード8.6。チリでは多く方が亡くなるなど甚大な被害が出ました。日本では亡くなった方こそいなかったものの、1mを越える津波が押し寄せて被害がでています。
地球の裏側から押し寄せる津波について
チリは日本からみてほぼ地球の反対側、1万5千キロ以上も離れた場所に位置しています。そのような遠い場所で発生した地震にも関わらず、日本にも津波が到達しています。さらに第一波が観測されたのは発生から22時間20分後。これはジェット機並みの速さです。津波の移動スピードは深い場所ほど速く、水深5000mでは時速800kmになるといいます。
揺れを感じないほど遠くで発生した地震による津波は、「遠地津波」と呼ばれています。遠地津波は地震発生から到達まで数時間~20数時間の猶予がありますが、揺れを感じないために津波に対しての危機意識が低くなりがちと言われています。
1960年、やはり同じくチリで大きな地震が発生していますが、その際日本でも場所によっては5m以上の津波が押し寄せて、全国で139名の方が犠牲になっています。
避難行動の風化
2010年のチリ地震について、消防庁は大津波警報が出された青森県・岩手県・宮城県の36市町村のうち、避難指示または避難勧告が発表された地域住民に対して、津波避難に関するアンケートを行っています。
それによると、調査回答者の98パーセント以上の人が大津波警報を見聞きしていたにも関わらず、実際に避難をしたのは4割弱だったそうです。
避難をしなかった理由は「高台など、津波により浸水する恐れのない地域だと思った」が約53%で過半数を占め、「他地域に到達した津波が大きくなかったので避難の必要はない」が約19%と続いています。逃げなかった理由の大多数は「堤防がある」といった、いわゆる「安全な場所にいる」という意識によるものでした。
アンケートは東日本大震災の前に実施されたものであり、現在の避難意識は異なっているかもしれません。しかし、2010年よりもさらに50年前、同じくチリで発生した地震の津波により多くの方が犠牲になっています。
時間の経過と共にどうしても「避難しなくては」という意識が低下してしまいます。また真冬の寒い夜中など、状況によってはさらに避難行動をためらってしまうかもしれません。
それでも避難という行動を起こすためには、過去を忘れずに「避難すべきだ」という意識を持ち続けることが大切だと思います。明日、2月27日。たとえ地球の裏側で発生した地震でも津波が襲ってくること。そして、過去の津波被害をもう一度考える日にしてはどうでしょうか。
5年前のチリ地震による津波で避難をしなかった人のうち、「身体的に避難が困難、家族に避難が困難な人がいた」という理由で避難できなかった方が約7%います。津波警報が出た場合、家族と共にどのように行動するかについても、もう一度考えてみるのもいいかもしれません。
参考WEBサイト
Text:sKenji