山登りのススメ Vol.18 ~丹沢山~

丹沢山と蛭ヶ岳の稜線上にて

神奈川県西部にある丹沢。都心から比較的近いために多くの登山者でにぎわう山である。丹沢山を中心とした丹沢山塊は日本百名山にも名を連ねている。最高峰は蛭ヶ岳の1,673m。

丹沢山塊には以前、檜洞丸 (ひのきぼらまる)に登ったことがあった。東京、神奈川といった大都市圏に近いにも関わらず、奥深さを感じさせる山で山間を流れる澄んだ渓流がとても印象的であった。

今回登ったのは丹沢でも中心的な山である「丹沢山」と「蛭ヶ岳」。訪れたのは今年9月下旬。標高の低い登山口付近の木々は緑であったものの、山頂付近では木の葉の色づきが始まっていた。

塩水橋から丹沢山、そして蛭ヶ岳へ

丹沢は多くの登山者が訪れる山であり、山小屋や登山ルートもバリエーションに富んでいる。丹沢山のポピュラーな登山コースとしては、神奈川県秦野市の大倉登山口などから、塔ノ岳を経由して丹沢山へ至るルートがある。しかし、少しでも楽なコースで登ろうと思った怠惰な私は、丹沢山への最短コースである塩水橋の登山口から登ることにした。

塩水橋の登山口

登山口がある塩水橋へは秦野市もしくは清川村の宮ヶ瀬湖から県道70号線で行くことができる。私は秦野市から北上して登山口へと向かった。

秦野市から塩水橋へ行く途中に「菜の花台」という眺望の良い場所がある。立派な展望台があり、秦野市街はもちろんのこと、相模湾や江の島、富士山などを見ることができる。

峠道である県道70号線は奥へ行くにつれ道幅が狭くなってくる。塩水橋の登山口付近に整備された駐車場はないので、道路が若干広くなっている場所に通行の妨げにならないように停めることになる。駐車スペースは10~20台程度しかないので注意が必要である。

塩水橋から丹沢山へ登山道は最初、林道歩きとなる。道の入口にはゲートがあるものの、人は通れるようになっている。

塩水橋から丹沢山へのコースは「塩水林道」と「天王寺尾根」と呼ばれる2つがある。行きと帰りで別のルートを歩いた方が楽しいものの、天王寺尾根ルートの登り口への林道が、今年3月に崩壊したために現在は通行することができない。

塩水林道コースは、塩水橋の登山口から約2時間ほど林道を歩いた地点から森の中の登山道を登って行くことになる。

塩水林道から登山道に入ると、9月下旬にも関わらず太陽の光を受けた緑が眩しく感じられ、心地良かった。

この日、登り始めの標高の低い場所では天気が良かったものの、丹沢山の山頂付近には雲がかかっていた。雨は降らなかったがガスがかかっており、視界は限定的であった。

眺望が全くない丹沢山の頂上で昼食を取ると、丹沢山塊最高峰の蛭ヶ岳を目指した。

丹沢山に登るならば、ぜひ蛭ヶ岳まで足を延ばすことをおすすめしたい。丹沢山から蛭ヶ岳への登山道は稜線上に作られている。高い木々の少ない開けた場所が多いため、眺望の良いコースとなっている。この日はあいにくの空模様だったが、それでも気持ちの良さを感じるルートであり、歩いていると心が躍った。時折、ガスが薄れて現れる山の稜線には惹きつけられるものがあった。

天気がいまひとつだったこの日。丹沢に魅力を感じなかったかというとそのようなことはなかった。ガスがうっすらとかかった光景には幻想的なものがあった。快晴だとどうしても眺望に目を奪われがちだが、曇ったこの日はあたりの植物に自然と視線がいった。霧の中に浮かぶ樹木や小さな花は、一段と美しさが増しているかのようであった。

蛭ヶ岳の頂上もガスに覆われており、眺望は全くなかった。しかし、天気がいいと富士山をはじめ、素晴らしい眺望が広がっているそうである。いつか、晴れた蛭ヶ岳に登ってみたいと思った。

蛭ヶ岳の山頂を踏んだ後は、来た道を戻って下山した。

今回は日帰りであったものの、丹沢山、蛭ヶ岳に登る際には1泊2日の登山をおすすめする。塩水橋を起点とした登山ならば、1日目に蛭ヶ岳を登り、山頂の山小屋に泊まって2日目に下山するといいかもしれない。

大都市圏から比較的近く、コースも豊富な丹沢は多くの方が楽しむことのできる貴重な山だと思う。登山者や山小屋も多いので、初めて日本百名山に挑戦したい方にもおすすめの山である。

丹沢山と蛭ヶ岳の途中にて

丹沢山

登山の帰り道。菜の花台からの光景

秦野市と塩水橋の途中にある「菜の花台」。夜の景色も良さそうだったので、帰り際に夜景を撮影することにした。標高約560mから見下ろす夜景は一見の価値があった。宝石をまき散らしたような光景は、特に大切な人と一緒に見るのに最適かもしれない。