[疑問解決?] 1号機の屋根パネル、2枚目を取り外してこの先どうなる?

11月10日、東京電力は福島第一原発1号機の原子炉建屋全体を覆っていた建屋カバーのうち、2枚目の屋根パネルの取り外し作業を実施、午前8時31分に吊り下ろし作業を終えたと発表しました。

「2枚目カバー取り外し(外観1)」1号機原子炉建屋カバー屋根パネル取り外し(2枚目)| 東京電力 撮影日:平成26年11月10日

photo.tepco.co.jp

朝8時半に完了した作業中の写真で、建屋カバーに光が差し込んでいることから、撮影されたのは建屋の陸側(西側)からだったことがわかります。また、屋根パネル撤去に先立って、飛散防止剤が散布されましたが、パネルの内側に飛散防止剤がしっかり散布されているのかどうかは、この写真からは判断できません。

1号機の建屋カバー屋根パネルは、全部で6枚で構成されています。10月31日に取り外された1枚目と合わせると、屋根部分の3分の1が開口したことになります。

屋根パネルが開いている間に実施されること

じっと見ていると目が回ってしまう写真ですが、作業中にクレーンに取り付けたカメラからの映像をキャプチャしたもののようです。

「2枚目カバー取り外し(クレーンより)」1号機原子炉建屋カバー屋根パネル取り外し(2枚目)| 東京電力 撮影日:平成26年11月10日

photo.tepco.co.jp

東京電力では、屋根パネルの開口部から、ガレキに対する飛散防止剤を散布するとともに、空気中のダスト濃度を確認、オペレーティングフロアのガレキの状況調査を実施するそうです。重要なのは、せっかくこれまで設置されていた建屋カバーを外したせいで、放射性物質を高い濃度で含むダストを大気中に排出させないこと。そしてガレキの撤去作業中にも、大気中にダストを飛散させないことです。

12月には屋根パネルをいったん屋根に戻される予定になっています。それまでの間に安全を十分確保しながら、最善の工事方法を検討してもらえることを信じてます。1号機のガレキ撤去のスケジュールを約1年も延期したのは、飛散防止対策を徹底することが目的なのですから、もちろん心配ないでしょう。

飛散防止剤の効果は?

屋根パネル2枚目の取り外しに先立つ11月6日、東京電力は飛散防止剤の効果を検証する実験の模様を、写真と資料で公開しました。

「飛散防止剤のダスト保持効果について」| 東京電力 撮影日:平成26年11月5日

photo.tepco.co.jp

左側の砂には「飛散防止剤散布後」とのパネルが付けられています。背後の送風機からの風で右側の砂が吹き飛ばされているのが分かりますが、PDF資料の方が劇的に分かりやすいので画面キャプチャで引用します。

飛散防止剤のダスト保持効果について

飛散防止剤の問題点

一目瞭然で見るからに飛散防止剤の効果が分かりますが、問題は「どんなに小さなダストが少量飛び散っただけでも、そのダストが高い線量に汚染されていたら、やはり原発事故に由来する放射性物質が、事故原発の外の環境に放出される事態になってしまう」ということです。

放射能に汚染されたものは、はガスも汚染水も放射性物質に汚染されたダストも、すべて事故原発の敷地内から外に出してはいけないはずです。それがアンダーコントロールということでしょう。

送風機の強い風でも、「見た目には」飛び散っていないようだから、海風に晒される中で重機を使ってガリガリ作業しても大丈夫という意味で、この実験の結果が使われることなどあってはならないことです。まさかありえないと思いますが、敢えて指摘しておきます。

飛散防止剤にアスベスト(石綿)用処理剤が使われていることを以前に紹介しました。実際のガレキ撤去でもアスベストを含む建築物の解体作業と同様の作業手順を採用していただきたいところです。

もうひとつの問題点は飛散防止剤の「着色」

「2枚目カバー取り外し(外観2)」1号機原子炉建屋カバー屋根パネル取り外し(2枚目)| 東京電力 撮影日:平成26年11月10日

photo.tepco.co.jp

もうひとつ問題点があります。それは今回の飛散防止剤が着色されていないことです。事故直後に敷地内に散布された飛散防止剤には明るい青緑色に着色された薬剤だったので、散布されている場所とそうでない場所、また散布が不十分と思える場所が見た目にも明確でした。

今回取り外された屋根パネルにも、微細なダストが付着していたと考えられます。もちろん取り外し作業を行う前に、ノズルを刺して飛散防止剤を散布する過程で、屋根パネルの内側にも散布は行われたはずです。しかし、その様子がうかがえない。着色されていないということは、散布されたかどうかが分からない、つまり、その物質の安全性を判断する材料がないということを意味します。

東京電力が昨年の3号機の建屋上でのガレキ撤去作業と比べて、1号機での撤去計画が優れていると強調しているのは、飛散防止剤を何度も入念に散布することです。であるなら、散布をより確実にするために、色付けされた飛散防止剤を使うのは必須であることは言うまでもありません。

強風によって屋根の開口部によってつくり出される過流によって放射性物質を含むダストが飛散する恐れはないか。風による振動で繊維でできたパネルが震動して、せっかく飛散防止剤で固着したダストが剥がれ落ちて飛散することはないか――。心配はたくさんありますが、安全、そして今後の多種多様な作業においても放射性物質を絶対に外に出さずに作業が行われますように。日本を代表する高度なエンジニアリング技術を持っている東電の知恵を事故原発に注いでください。

1号機建屋カバー撤去の関連記事