5号機で水漏れを起こした弁の内側は、ボロボロに錆びていた
7月30日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
7月6日に発覚した5号機補機冷却海水系配管の漏えいの推定原因と今後の対応について
原因は流量調整弁の絞り開度の関係で、海水の流速が上昇し、弁体内部のゴムが損傷、さらに弁本体が腐食して孔があいたものと推定。
福島第二原発3号機にある同じ仕様の弁を点検手入れした上で流用し、7月30日に補機冷却系、燃料プール冷却浄化系を起動した。
同様の弁については定期的に分解点検を行うほか、今回修復を行った弁は新しいものへの取り換えを計画する――とのこと。
写真を見ての印象は「錆びてボロボロ」。海水に使用すること自体に無理があったのではないかと素人目には思えてしまう。少なくとも定期的な点検は不可欠だったに違いない。東京電力のみならず、他の停止中の原子力発電所にも情報の横展開を切望。
※7月6日にお知らせした、5号機補機冷却海水系出口配管の流量調整弁(以下、「当該弁」という。)の漏えいについて、その後の調査の結果、当該弁は、平成23年1月(第24回定期検査時)以降、弁の開度が30%*1の絞り状態で運転をしており、このため、弁内部で流速が上がり*2、その水流が弁内部に激しく衝突したことでゴムライニングが損傷し、母材が侵食(腐食)して、貫通穴(3mmの孔)に至ったものと推定した。また、数値流体力学(CFD)による流れ解析を行った結果、当該弁の損傷箇所は、流速および流線が大きく変化していることを確認した。
当該弁については、同じ仕様の弁(福島第二原子力発電所3号機の補機冷却海水系の弁)を流用し、点検手入れを行った後に取替を実施。また、当該弁上流側の流量調整弁についても一部にライニングの剥離箇所があったため当該箇所の補修を行い復旧した。
これらの復旧が終了したことから、7月30日午前10時42分、補機冷却海水系を起動。同日午後0時14分に補機冷却海水系の運転状態に異常が無いことおよび弁の漏えいが無いことを確認した。
また、同日午後2時30分、燃料プール冷却浄化系を起動し、燃料プール冷却浄化系による使用済燃料プールの冷却を再開した。冷却再開時の使用済燃料プール水温度は27.6℃。
今回の事象を踏まえ、当該流量調整弁および当該弁上流側の流量調整弁については、点検方式の見直しを行い、定期的に分解点検を実施していく。また、ゴムライニングの補修を実施した弁については、新弁への取替を計画する。
*1 定期検査時等における短期間時の運用開度。プラント通常運転中は40%開度
*2 開度30%時の流速は、開度40%時の約1.7倍と評価
そもそも――。
流量を調節するための弁が、調節して使用したせいで破損するとはどういうことか? 「開度30%時の流速は、開度40%時の約1.7倍」という評価は、弁の設計時になされているべきことだ。
東京電力社員の警報付ポケット線量計(APD)不携帯の続報。富岡労働基準監督署が労働安全衛生法違反として是正勧告
※7月29日午後1時15分頃、設備パトロールを実施していた当社社員が警報付ポケット線量計(APD)を装着していなかったことがわかった。(前日発表)
その後、富岡労働基準監督署より労働安全衛生法違反*としての是正勧告書を受領。
なお、当該作業員の被ばく線量は、同作業に従事した他の作業員の被ばく線量が0.14mSv(APD値)であることから同等程度と考えている。
今後、APDを装着していなかった原因と対策について調査・検討していく。
*労働安全衛生法第22条第2号(電離放射線障害防止規則 第9条第1項)1日における外部被ばくによる線量が1センチメートル線量当量について1ミリシーベルトを超えるおそれのある労働者については、電離則第8条第1項の規定による外部被ばくによる線量の測定の結果を毎日確認していないこと。
東京電力社員の不始末で、現場作業を行う協力企業の作業員に、管理や手続きの煩雑化といった迷惑がかかることがありませんように。
1号機~4号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年7月22日午前9時50分~)
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年6月16日午後2時42分~)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動(4号機原子炉建屋および共用プール建屋の天井クレーンと燃料交換機の年次点検により、一時中断)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
5号機 ~使用済み燃料プール冷却浄化系を起動
・冷温停止中
加えて、補機冷却海水系の弁取り換えにより、使用済み燃料プールの冷却浄化系を起動したことを新規項目として記載
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
6号機
新規事項なし
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール ~キャスク内包水・洗浄水の移送を「適宜実施」表記
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
加えて、キャスク(燃料移送用大型容器)の内包水・洗浄水を貯蔵してきた低電導度廃液受タンク水の定期的な移送について新規記載
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
「適宜移送を実施」という表現から、同様の移送について今後はいちいち発表しない可能性もある。
水処理設備および貯蔵設備 ~サイトバンカ建屋からプロセス主建屋へ溜まり水の移送を開始
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
加えて、溜まり水の移送について記載
・7月30日午前10時11分、集中廃棄物処理施設において、サイトバンカ建屋からプロセス主建屋への溜まり水の移送を開始。
サイトバンカ建屋は4月に溜まり水の誤移送が発生した建屋のひとつ。サイトバンカ建屋からプロセス主建屋への滞留水移送はサイトバンカ建屋の水位上昇に合わせて適宜実施されてきた。
地下水バイパス
新規事項なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
平成26年7月29日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年7月30日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太