作業員の人手不足が懸念される福島第一原発

福島第一原発で作業する方の人手不足が懸念されているという。

現在、第一原発では、1日あたり3000~4000人の方が作業をしており、廃炉まで40年かかると言われている。計画通りの廃炉完了については、疑問視をする声もあるものの、仮に一日あたり3000人とした場合、単純計算で、延べ4380万人(3000人×365日×40年)の人が必要になる。

高さ634m、自立式電波塔としては世界一の高さを誇る東京スカイツリー建設に携わった人が、延べ58万5千人と言われており、廃炉作業には、約75個のスカイツリーを建設するのに匹敵する人手が必要である。これほどの人手が必要であるにも関わらず、さらに「被ばく線量限度」や「待遇の悪化」などの理由により、現在、原発を離れる人が増えており、将来的に廃炉作業に支障をきたす恐れがあるという。

原発で作業される方の被ばく線量限度について

現在、原発作業員の許容被ばく線量は、1年で50mSv、5年で100mSvまでと決められている。許容量に達すると、原発で作業することはできなくなる。

原発での作業において、いったいどの程度の線量を受けるかということが気になるところだが、原発事故発生から2014年1月までの被ばく線量について、次のように発表されている。

福島第1原発では事故からことし1月まで、計3万2034人が作業に当たった。平均被ばく線量は12.58ミリシーベルトで、最高は原発事故後に中央操作室にいた作業員の678.8ミリシーベルト。
半数の1万5363人は労災認定の可能性がある5ミリシーベルトを超えている。

引用元:神話の果てに 第12部・廃炉の現場(上)過酷な作業/高線量状態が日常化 | 河北新報オンラインニュース

発表によると、今年1月時点で、被ばく線量限度の100mSvを越えている人は、173人いるようだ。東京電力が先月公表した別の資料によると、第一原発にある4号機において、低減対策を行い、被ばく線量を約3分の1に減少させたというが、事故から3年以上が経ち、許容量に達して、現場を離れる方が次々にでてきているとのことである。特に知識や経験の豊富なベテラン作業員の方が少なくなり、作業の質の低下も懸念されている。

作業員の方の待遇について

「被ばく線量限度」に達してはいないものの、辞める人が増えてきているという。その原因である作業員の方の待遇について、河北新報に次のように書かれている。

下請けの男性は「今までの付き合いで仕事を受けているが、給料が低く継続雇用の保証もない。(被ばくによる)健康不安もある。そんな職場で普通、働きたいとは思わない」と語る。
複数の作業員によると、福島第1原発の日当は6000円~1万5000円程度らしい。2次、3次と下請けが重なるにつれて中抜きされる額が増え、大きな差につながっている。
福島第1原発の現場では、3次どころか6次下請けもざらだという。
さらに福島第1原発で働けば、累積の線量が1年もたたず限度に近づく可能性がある。「そうなると他の原発でも働けなくなって、収入は伸びない。熟練作業員ほど福島を避ける」と現場監督の経験者が打ち明ける。

<日当の逆転現象>

原発構内の事故処理より、被ばく量が少ない周辺市町村での放射性物質除去の方が日当が高いという「逆転現象」も起きている。作業経験のある男性(東京都)は、除染に仕事を変えたら日当が1万1000円から1万5700円に増えた。

引用元:神話の果てに 第12部・廃炉の現場(中)/困難な要員確保 | 河北新報オンラインニュース

よりリスクの高い作業に当たっている、原発作業員の待遇が記事に書かれている状況にあるならば、現場を離れる人が増えるのは当然だろう。そのため、東京電力は、昨年12月以降に人件費を1日当たり1万円増やしたという。ただ、その上乗せ分がそのまま末端の作業員まで届く保証はないということである。

廃炉作業が完了するまでは

以前に比べると、耳にすることが減ってきている福島第一原発だが、いつまた、さらに状況が悪化するかはわからない。少しでも早い廃炉作業完了が望まれるが、そのためには、原発で作業される方の力がどうしても必要であることは言うまでもない。廃炉作業が完全に終わるまで、まだまだ予断を許すことができない状況であることを、改めて考えさせられた話である。

福島第一原子力発電所

参考WEBサイト

紹介:sKenji