2014年3月24日 今日の東電プレスリリース

3月24日(月曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。

多核種除去設備(ALPS)処理中断のA系,C系運転再開

3月18日から全系統が停止していた多核種除去設備(ALPS)について、「原因」と「対応」「A系,C系運転再開」を伝えました。

日報に先立ち公表された「報道関係各位一斉メール」(日報と同内容)を元に、状況について考察した記事をアップしています。詳しくはこちらをご参照ください。

追記:1

3月24日、報道配布資料として「一斉メール」よりも詳細な情報が東京電力のホームページで公開されました。

※ 上記の「速報ページ」にも追記しました。

追記:2

汚染されたサンプルタンクや管路、貯蔵タンクへのパイプラインの洗浄を目的として、運転再開された多核種除去設備(ALPS)のA系,C系ですが、サンプルタンクの側面のマンホールから1秒1滴程度の水漏れが確認され、午後6時58分に処理を中断したと報道関係各位一斉メールが伝えました。

福島第一原子力発電所 多核種除去設備(ALPS)A系およびC系の処理停止について

 多核種除去設備(ALPS)につきましては、汚染水が流入した系統(サンプルタンク(C)および配管)の浄化運転を行うため、本日(3月24日)午後0時59分にA系、同日午後1時にC系の運転を再開しております。

 その後、同日午後6時56分頃、サンプルタンク(C)側面のマンホールのリークチェックを行っていた当社社員が、1秒に1滴程度の漏えいを発見しました。

 漏れた水については、現在、ドレンパン上でビニール袋に受けており、袋の中にとどまっていることから、外部への漏えいはありません。
 また、漏えい量は約500mlと推定しております。

 これに伴い、多核種除去設備(ALPS)A系及びC系の処理を午後6時58分に中断し、循環待機運転に移行しました。

 なお、サンプルタンク(C)側面のマンホールについては、タンク内部の洗浄のため一時開放しており、昨日(3月23日)までに復旧しています。

 詳細についてはわかり次第、お知らせします。

以 上

引用元:福島第一原子力発電所 多核種除去設備(ALPS)A系およびC系の処理停止について|東京電力 平成26年3月24日

循環待機運転というのは、出口から出てきた処理水を再び入口に送って循環させるということだと思われます。

1号機〜5号機

新規事項なし

◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3月14日午前6時48分、1号機使用済燃料プール代替冷却系について、1,2号機排気筒の落下物に対する防護対策等を実施するため、冷却を停止(停止時プール水温度:12.0℃)。なお、停止期間は3月24日までを予定しており、冷却停止時のプール水温度上昇率評価値は0.066℃/hで停止中のプール水温上昇は約16.5℃と評価されることから、運転上の制限値60℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題なし。

◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆3号機
2号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)

◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

6号機

◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)

使用済燃料プールの冷却について、系統の切り替えを新規記載。
2月24日に原子炉冷却系の冷却水の一部が圧力抑制室に流れていた件から始まった紆余曲折が元の鞘に納まった様子です。ただし、原子炉冷却系の冷却水の一部が圧力抑制室に流れていたインシデントは未解決のままです。

これまで経緯の一部(のみ)を記載した冒頭部分から引用します。

※残留熱除去系ポンプ吸込ライン(A系、B系共通ライン)に設置されている安全弁(F-005)の点検が終了したことを受け、タービン補機冷却水系熱交換器(C)海水出入口弁他の点検を行うため、補機冷却海水系を3月18日から24日にかけて停止する。

当該期間においては、燃料プール冷却浄化系(FPC系)が使用できなくなるため、残留熱除去系による非常時熱負荷運転(使用済燃料プール冷却)を行い、使用済燃料プール冷却を実施する。

3月17日午後1時50分、FPC系を停止し、同日午後2時26分残留熱除去系(RHR系)による非常時熱負荷運転を開始。なお、使用済燃料プール水温度は17.5℃と変化なし。(ここまで既出)

3月24日、上記点検作業が終了したことから、補機冷却海水系を起動。

これに伴い、使用済燃料プール冷却を残留熱除去系(RHR系)による非常時熱負荷運転から使用済燃料プール冷却系(FPC系)に切り替えるため、

同日午後0時32分にRHR系による非常時熱負荷運転を停止し、午後0時45分にFPC系を起動。FPC系の運転状態に異常はなく、FPC系起動後の使用済燃料プール水温度は19℃。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年3月24日

FPC系:地震前から使用済燃料プールの冷却に使われていた冷却系。タービン建屋の補機冷却海水系へのパイプの接続が、震災後に行われた応急のものであるかどうかは不明です。(調べます)

RHR系:原子炉が停止した際に、燃料が発する余熱や核燃料の崩壊熱(放射性物質が核分裂を起こすことで発生する熱)を冷やすための冷却系。

共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況

新規事項なし

◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中

※ 「多核種除去設備(ALPS)ホット試験中」との記載は、3月18日に3系統あるALPSの全系統の処理がストップした後も、ずっと掲載され続けました。このことは管理システムが徹底している企業としては異例なこと。とくに東京電力が作成公開してきた日報では、このような「放置」は極めて特異なことです。
ALPSの不具合がいかに重大だったかを逆に物語っているかのようにも映ります。

H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果

昨年夏にタンクからの漏水で大きな問題になったエリアでは、22日から相次いで高線量な場所が発見されています。24日にもH1E-C-2で高線量な場所が発見されました。高濃度汚染水からセシウムを除去したのち、淡水化装置(砂漠などで海水から真水をつくる装置と同様のもの。家庭用浄水器にも応用されています)で、淡水と濃縮された塩水(放射性物質のほとんどを含む)とに分けられた、「濃縮された方」の水を貯えるタンクでインシデントが続発しています。

※H4エリアIループNo.5タンクからの漏えいを受け、同様の構造のタンクの監視、および詳細な調査を継続実施中。

<最新のパトロール結果>
3月24日午前中のパトロールにおいて、H1東エリアのH1E-C2タンクフランジ部(南東側におけるタンク底部から2段目の水平フランジ)1箇所に錆があることを協力企業作業員が確認。その後、当社社員により70μm線量当量率の測定を実施したところ、高線量箇所であることを確認。測定結果については、以下のとおり。

[H1E-C2タンクフランジ部]
・70μm線量当量率(ベータ線): 27 mSv/h ※高線量率箇所から5cm離れた位置
・1cm線量当量率(ガンマ線):0.1 mSv/h ※高線量率箇所から5cm離れた位置

また、タンク目視点検において、当該箇所に漏えいは確認されておらず、当該タンクの水位監視においても、水位変動がないことを確認。引き続き、タンクパトロールを継続する。

なお、3月23日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(ベータ線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年3月24日

【用語解説】

フランジ:継ぎ目。ボルト止めするため出っ張りがある。

堰床部の雨水による遮へい効果:水が多くの放射能を遮断するため、計測器でカウントされる放射線量が少なくなるということ。炉心や使用済み燃料が水に浸けられているのも同じ理屈。

トレンド監視:水位変動による監視。警報監視は定められた水位を超えた時に発せられるようにセッティングされた警報による監視。

「線量当量」は人体への影響を基準に設定された「線量限度」を元にした数値です。ここでのデータは、3月22日の数値より数字上は少なく見えますが、かなり高い数値であることに違いありません。下記リンクで詳しく説明しています。ご参照ください。

◆併せて、最新のサンプリング結果についても新規事項として記載されています。

※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年3月24日

※H6エリアC1タンクからの漏えいを受け、H6エリアタンク周辺のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
地下水観測孔G-2において、3月22日に採取した地下水のトリチウムの分析結果は、4,600Bq/Lであり、前回値(3月21日採取:410Bq/L)と比較して10倍程度上昇している。今後も監視を継続していく。
<地下水観測孔:G-2>
 ・3月22日採取分(今回):トリチウム 4,600 Bq/L
               全ベータ   32 Bq/L
 ・3月21日採取分(前回):トリチウム  410 Bq/L(お知らせ済み)
               全ベータ   54 Bq/L(お知らせ済み)
 (参考)告示濃度限度  :トリチウム 60,000 Bq/L

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年3月24日

1~4号機タービン建屋東側の状況

新規事項なし。

地下貯水槽の状況

サンプリング結果について記載。

<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成26年3月24日

以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月24日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太