この子を連れてきた日
2011年5月の話
門脇にはたくさんの自衛隊さんたちが入っていた。
大きな 大きな 自衛隊の車が行き来する中 わたしは小さな小さな自転車でその場所に通っていた。
あの頃は「なんか自分のもの残ってないかなぁ」っていう思いがあったんだと思う。
めちゃくちゃな道に落ちていたCDはとりあえず全部ひろってみては溜め息をついた。
そして そこで作業をしていた自衛隊さん達にはとにかく声を掛けていた 掛け続けていた
「ありがとうございます」
「ご苦労さまです」と
そして何日か通い続けたある日
ひとりの自衛隊さんがわたしに近づいて声を掛けてくれた。
一瞬こんな無防備な格好で来ているから注意でもされるのかな なんて身構えると
「この前も来てましたよね」と言われた。
正直 わたしからしたら自衛隊さんの姿はみんな同んなじに見えていたから(顔も見えないし)一瞬「んっ?」ってなったけど
「いやーこの前もここでなにか探しているようだったから」と言われ
自分はここに住んでいたという話しをすると「わたし 明日 山形に戻るんです なにかいる間に見つけてあげられたら良かったんだけど」と言ってくれ わたしは「いいえ ご家族もみんな心配しているでしょう こんな大変なところに来てくれてありがとうございます」と言うと「いや これがわたしたちの仕事ですから」とニッコリと微笑み言ってくれた。
そして また自分んちがあったところに行ってみると…
この子が瓦礫の中で咲いていたのでした。落ちていた穴だらけのコンビニの袋を拾い根っこを傷つけないように掘りこの子を連れて帰る途中あの自衛隊さんに再び声を掛け
「この子がいました!」というと
「良かったですね」と笑って言ってくれた。
そして「自衛隊さんもどうかお元気で!」とわたしをその場を後にしたのでした。
あの 山形の自衛隊さんたち 元気かなぁ〜
2014年3月2日 / 文●新柵ひろ子