通常報道される放射線量は、1時間あたりの放射線量で、正しくは放射線量率といいます。
放射線量とは、受けた放射線の累計です。ですから1時間あたりの放射線量とは、1時間に受けた放射線の累計です。
個人線量計は、累計の放射線量を測定するものですが、放射線量率まで測定できるものもあります。
(放射)線量率計で測定すると測定値が絶えず変わります。風の影響では?と思う人もいます。これは壊変(放射性物質の変化)が不規則に起きている証拠です。
線量率計を見ると数値が上がったり、下がったりするので、上限と下限の中間を測定値とします。時間をかけて上限と下限を見定めてから暗算で平均するので、頭の体操にうってつけです。1分くらい時間をおいて5回測定し、その平均を出す方法もあります。
さらに測定場所が数センチメートル違うと、測定値が変わります。そもそも同じ場所でも変動しているので、厳密に数値を確定するのは困難なため、確率としてこの程度の数値が確からしいという数値を読み取っているのです。
(放射)線量率を見るなら、測定箇所が少ないと数値に偏りが出やすいため、なるべく多くの箇所を測ることが重要です。
庭の中央の線量率が0.20μSv/hでも、周辺部は0.30μSv/hあるかもしれません。あるいは特に低いかもしれません。
測定数値の有効桁数は通常3桁です。それ以上の桁は誤差が大きくなるため精度上、省略しています。
ほかにも、水分があると放射線が弱まり(水で遮へいされるため)、線量率が下がります。雨が降ると1~3割は下がりますので、比較する際は同じ状態で測るのが基本です。
除染の前後でどれだけ下がったかを見るために測定しますが、測定時の湿り気を考慮しないと測定値の意味がなくなります。
残念ながら、そこまで考えて測定している業者は少ないというより、そこまで理解していないというべきでしょう。
同じ場所を測定しても、測定日によってまったく違う数値が出るのは湿り気の影響によるものと考えられます。湿度ではなく、地面に水分がどれだけ含まれているかが問題なので、現在、晴天でも数日前に雨が降っていれば、地面は水分が多いため、線量率は低くなります。
除染で発生した側溝のごみは、濡れた状態では低いものの、乾燥させると予想外に高くなり、驚かされます。
また測定する高さによっても、線量率は変わります。放射線は、距離が長ければ弱くなるため、通常は高い場所ほど、地面からの放射線が弱まるため測定値は下がります。(地形によって変わります)
細かく言うと、測定器の測定部(プローブ)の向きによっても変わります。汚染部分が一様でないため、向きによって放射線の入り方が変わるため、数値が変わります。
それから放射性物質は、徐々に壊れて少なくなるため、1ヶ月~半年間隔で見ると線量率は下がっていくことがわかります。
そういう意味で、定点モニター(自動測定)は優れています。ある期間を平均すれば、そこの線量率がわかり、どのように推移していくかが予想できます。
線量率計をお持ちの方は定期的に同じ場所を測定し、記録に残し、変化をみてください。グラフで表せば、今後の見込みもわかります。急に下がったら、雨か、除染作業か、建設工事の影響があります。
線量率計がなくても、インターネットで各地の放射線量(率)測定値が公表されていますので、それを利用するのが便利です。
線量率を測る場合、測定物に測定器の測定部(プローブ)を近づけますが、測定値は測定物の線量率を示していないということをご存知ですか?
では何を測ったのか?実は、測定部(プローブ)周囲全体の線量率を測っているのです。ですから、地面の線量率を測るつもりが、測定部(プローブ)の場所の周囲全体からの放射線を測っているのです。
ですから、地面の線量率が低く、周囲の線量率が高い場合には、地面の線量率(?)も高くなり、地面がどの程度かわかりません。
放射性物質が広範囲に存在する場合は、全方向からの放射線を受けるため、高汚染場所(ホットスポット)を見つけるには、線量率計は向いていません。(通常はGM管式サーベイメーターを使います。飛距離の短いベータ線を測定するため、周囲の放射線の影響がありません。)もしくは測定部(プローブ)の周辺を鉛で覆い、周囲の放射線を遮へいして一方向だけの線量率を測定する方法がありますが、鉛の塊のため非常に重く、持ち運びが不便です。
このように線量率は、測定条件で大幅に変わるので目安として考えるべきで、数値の差はあまり気にする必要はありません。
測定値には、大きな誤差があると考え、全体の傾向がどうなっているかを見るべきです。