流動する世界 ~中央アジアのニュースを読んで~

気になる新聞記事を読んだ。1月23日付、産経新聞の記事。

アフガニスタンから米軍などの国際治安支援部隊(ISAF)が年内に撤退するのに伴い、隣接する旧ソ連・中央アジア諸国がイスラム過激勢力の浸透などによって不安定化することへの懸念が強まっている。域内大国のウズベキスタンで政治・経済危機の兆候が出ていることも事態を複雑にしている。ロシアは自国南方の情勢流動化に不安を抱く一方、ソ連崩壊後に減じたこの地域での影響力を回復しようと狙っている。
 ISAFは昨年6月にアフガン全土での治安権限移譲を終えており、今年末までに撤退する予定。だが、アフガン治安部隊の能力は疑問視され、同国ではイスラム原理主義勢力タリバンが盛り返している。ISAF撤退後に中央アジアでイスラム過激派が伸長し、アフガンからの麻薬流入が増える事態を域内各国は強く警戒する。
(中略)
ウズベキスタンでは新規開発の停滞から石油生産が2012年までの約10年間に半減、燃料不足や食糧価格の高騰も目立つ。露有力誌エクスペルトは、中東・北アフリカでの民衆蜂起「アラブの春」に類似した政変も大いにあり得ると指摘した

引用元:露、中央アジアに触手 米アフガン撤退…イスラム過激派が伸長+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

あまり関心がないと少し長く感じてしまうニュースかもしれないが、いってしまえば「中央アジアがきな臭い」ということ。

この記事はあくまでも不安定化する可能性があることを報じているものだが、ここ数年の中東やイスラム諸国の情勢を見ていると、必ずしも楽観視できそうにもない気がする。ウズベキスタンは個人的に今、一番行ってみたい国だけに余計気になってしまった。

ウズベキスタン

ウズベキスタンは、中央アジアの真ん中あたりにある。首都はタシュケントだが、見どころはなんといってもサマルカンド。古代よりオアシス都市として栄え、シルクロードの中継地となっていた歴史がある。支配する国は時代によって変わってきたが、絶頂期は15世紀のティムール朝だと勝手に思いこんでいる。ティムール朝は、歴史上最大の版図を誇ったモンゴル帝国の小貴族だったティムールが、サマルカンドを首都として、樹立したイスラム王朝だ。ティムール朝の時代に、世界遺産・レギスタン広場にあるウルグ・ベグ・マドラサを始め、数々の美しく壮麗な建築物が作られている。

サマルカンド・レギスタン広場

ja.wikipedia.org

世界は流動する

世界は流動する。

平和で安全な日本にいると、平和なことは当たり前であり、このままずっと平穏な時代が続くのではないかと思ってしまう。しかし、悲しいことに歴史上、永遠に平和が続いた国を私はしらない。平穏な時代の長さに差はあっても、まったく争いがなかった場所はあるのだろうか。太平洋に浮かぶ絶海の孤島に行った時でさえ、そこには血なまぐさい歴史があった。

10年ほど前に中東・シリアを訪れた。

当時のシリアは居心地がよく、平和な国だった。言論の規制など様々な問題はあったものの、多くの人は平和に暮らしていたように私の目には映った。

しかし、シリアは今、内戦で多くの人が死んでいる。昨年7月の段階で、死者は少なくとも10万人を超えたということだった。シリアを旅していた当時、今日のような状況を想像することはできなかった。

もう一度、繰り返して言う。

「世界は流動する」

今、安定している国でも、紛争状態に絶対にならないなんてことはない。ひとたび戦争がおきれば、多くの人が死ぬ。文化的な遺産も永遠に消えてなくなる。失うものはあまりにも大きく、そして多すぎる。

死ぬまでにティムール朝時代の数々の建造物をこの目で見てみたい。ヨーロッパのような華やかさはないかもしれないが、荒涼とした褐色の街のイメージがするサマルカンド。そして、そこに咲くティムール朝の遺跡。まだ、見ぬ中央アジアの国々。その地が、いつでも旅ができる平和な国のままであってほしい。

杞憂に終わってほしい、とても気になる中央アジアのニュースだった。

サマルカンド

Text & Photo:sKenji