石巻のヒツジの毛をつむいで、毛糸づくりと編み物を

吉田麻子さんからお手紙をいただいた。ほんわかした記憶がよみがえってきた。

またまた石巻におじゃまします!
あのときの糸をお持ちでしたら、
何をつくろうか一緒に考えて編みませんか。

手紡ぎ作家の吉田麻子さん

指先で軽く捻ると、もわもわの羊毛が撚られて毛糸になる。その瞬間、羊毛のぼわーんとした色合いがキュッと鮮やかな色になる。空気を含んでもはもはしていた羊毛が、カラフルな毛糸に変身する。毛糸って魔法みたいだ!と思った。

あとはもう毛糸のとりこ。手つむぎのプロセスをひとつひとつ教えてもらって、日和アートセンターに毎日のようにやってくるという町の人たち、学校帰りの高校生、アートセンター常連の小学生たちと一緒に、黙々と糸つむぎの作業に携わったり、おしゃべりしたり、お茶したり。そんな時間をすごしたのでした。

初めての手つむぎ毛糸に、即はまってしまった冬の日

吉田麻子さんは手紡ぎ作家。そうそう、あのころ(2013年2月~3月)日和アートセンターにはこたつがあったのだった。なにしろこの時の展覧会のタイトルは、スサイタカコさんと吉田麻子さんの二人展「モケモヶコタツビヨリ展」。アートスペースの真ん中に大きなこたつをでーんと据えて、やってくる人たちと一緒にこたつに入ってアートを体験したり、楽しんだりという、めちゃくちゃハッピーなイベント。冬の石巻の街なかに登場したほかほかこたつ空間でお会いして以来、すっかりファンになってしまったのです。

手でつむいでいくと、こんなに味わいのある毛糸ができあがるんだ~。と感動を呼び起こす作品のまわりには、お茶っこの後のお茶碗があったり、写真には写っていないけれど、おこわせんべい(2枚の南部せんべいでおこわをサンドイッチしたもの。味も食感も異次元感覚の美味しさ!)や棒寿司などなど、東北ならではの差し入れがいっぱいだったり。天井からはスサイタカコさんの不思議なオブジェが吊り下げられ、白い壁は即興アートの壁画のカンヴァスに変身していたりするのです。

壁面にはスサイさんがイベントで描いた、毛糸のつくり方のイラストも貼り付けられています。その手前にはつくりかけの毛糸が吊るされています。何気なく干しているだけなんだろうけど、それがまた味があって何ともいえないいい雰囲気。「ここって本当にアートギャラリーなんだろうか」、なんて思ってしまうのは、もちろん悪い意味ではなくて、なんだかとても居心地のいい特別な場所!という、ファンタスティックな気持ちから。

アーティストさんが石巻を大好きになっていく

いままでに経験したことがない展覧会だった。こたつに入ってのほほーんとしたり、おしゃべりしたり、がんばって手を動かしたり、人のおしゃべりに耳を傾けたり。そんな展覧会なんて、ほかにありっこない。

だから、この展覧会が大好きになったわけですが、それは珍しいイベントだからという理由ではなくて、アートスペースが町の寄合場所として機能しているということがうれしかったり、その場所にやってくる人たちの雰囲気にいちいち惚れ込んだり、そして何より大きかったのは、きっとアーティストのお二人が展覧会を通して「石巻大好き!」になっているのを、声とか所作とか目の輝きとか、全身から放射される熱のようなものをライブで受け取ることができて、それがまた、自分が感じていることと同じだったりするもんだから、共感? 波が共鳴するような感じで「うん、一緒だね!」っていう気もちになれたことなんだと思う。

吉田麻子さんは、展覧会が終了した後も石巻を訪れていたみたいだし、フェイスブックを見ていると、スサイさんと一緒に日本中のあちこちに出かけたりもしている様子。町の人たちと仲よくなるのはもちろん、アーティスト同士が、この町でつながっていく。冬の石巻のこたつの中で育まれた友情がふくらんで、また石巻にかえってくる――。

素敵すぎます。

今回は、石巻のヒツジの毛をつむいで毛糸を作ります。これまでにつむいだ東北羊の毛糸を使って、あなただけの小物をつくりましょう!というワークショップ。3回目となる今回は、2本撚り糸や撚り止めといった行程も教えてもらえるとか。
日時は11月23日と24日。時間はいずれも14時から17時。場所はもちろん、日和アートセンターです。きっとすてきな出会いがたくさん待っていますよ!

会場はこちら

石巻市の日和アートセンターです!

●TEXT+PHOTO:井上良太