宜野湾・真栄原で夜を明かした話(1)(沖縄・社交街の夜)

僕は旅行が好きなのですが、だからと言ってお金があるわけではありません。だいたい、削れる部分を極力削ってしまう貧乏一人旅です。

特に宿泊費は削れる限り削ります。ホテルなんて言語道断、可能ならばネットカフェかドミトリー宿と言ったところでしょうか。

ただ、そんな僕でもやや抵抗があるのが「野宿」。いくら、無料で済むとは言え、さすがに色々とキツイです。実際にキツかった思い出なんかもあったりして……。

ということで、今回は沖縄本島でやむを得ず「野宿」をした話。

那覇の夜

大学生当時の4月。

一人旅で沖縄本島に降り立った僕。小学生の時の家族旅行以来、およそ10年ぶりの沖縄である。19時に到着したフェリーの中から見る、那覇港の煌びやかな夜景が印象的だった。

特別な予定はない。

「このまま何日か過ごし、石垣島にでも行こうか」くらいの、行き当たりばったりなプラン。あまりルールや予定で縛ってしまうと息苦しくなる性格のせいか、まぁこれくらいテキトーさでちょうど良いかと思っていた。



ところが、那覇港のフェリーターミナル付近は、いかにも海運の拠点といった感じの倉庫街。周辺は思いのほか閑散としている。

同じようにフェリーに乗っていたお客さんたちは、みなホテルの送迎バスやタクシーに乗って行ってしまい、気が付けば僕一人だ。

見知らぬ土地に降り立ったとき、一番頭を使うのは第一歩目である。薄暗い倉庫街のなか、まず最初にどちらの方向へ向かえば良いのやら。沖縄はバス社会だと聞いていたものの、フェリーターミナルには停留所も無い様子。

実は、少し歩けばすぐ繁華街に出られたのだが、この時はまず手元に地図が無く、そもそも行き先すら決めていなかった。



とりあえず、ケータイで安そうなネットカフェやドミトリー宿を片っ端から検索、電話を掛けてみる。しかし、どこも満室、満室、満室……。

ケータイの電波はいまひとつだし、表示されるページも重い。

時間だけが刻々とすぎ、気が付けば21時をまわっていた。ようやく繁華街らしい国道沿いに出たものの、ここからどう動けばよいかわからない。大手ホテルチェーンならともかく、常識的に考えて、21時以降にチェックインできるような安宿があるだろうか。常識を欠いた僕でさえ、そのあたりが不安になってきた。

「おいおい、コレは意外とヤバいかも?」

そう思い、内心焦りが出始めたころ、

「あ、はい!空いてますよ~」

と返事をくれたのが、沖縄ローカルと思しきネットカフェ。

「いやぁ、助かった……」と安堵しつつ、住所を調べたところ、場所は沖縄県宜野湾市真栄原(ぎのわん市まえはら)……。なんと、那覇市ではなくて宜野湾市じゃあないか!宜野湾市ってどこだ!?

「どう行けば良いんだ……」とうろたえていると、ちょうど僕の前にバスが止まった。ふらふら歩いているうち、どこかのバス停にたどり着いたらしい。

「宜野湾経由普天間行き、最終でーす」

えっえっえっ!もう最終バス!?

しかも宜野湾経由!?

展開が早すぎるよ!!

突然やってきた最終バスに慌てて飛び乗った。沖縄の地理がまるでわからない僕。もうこれ以上変な行動をするくらいなら、さっさとネットカフェに行ってしまおう。こうして僕は、那覇市から10kmほど北へ離れた宜野湾へと向かった。





(つづく)