青春18きっぷを手にすると、どれだけ電車に乗っていても平気になってしまう。
--------------------------------------------------------------------------------------- ■青春18きっぷ
・JR北海道からJR九州まで、すべてのJRの普通列車が乗り放題になる。
(特急列車は不可)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
・使用期間は大まかに春、夏、冬。学生の休暇時期と重なるように設定される。
・5枚つづり11,500円で販売されるため、1日あたり2,300円で乗り放題。
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向かいに座った無防備な女の子
2時間30分の身延線を抜け、山梨県の中心・甲府駅に到着。
東京から名古屋までを結ぶ中央本線に乗り換え、今度は2時間かけて塩尻駅を目指す。
先に座席に腰かけていると、向かい側に薄手のワンピース、麦わら帽が良く似合う女の子が座った。9月ながらまるで春のようなさわやかな晴れ、山梨の高原らしい風景がよく似合っている。
さてさて、こうして電車の乗り換えを繰り返していると、「まぁ色々な種類の車両があるものだ」と感心するのだが、厄介なのは【固定式のクロスシート】。つまり、対面式で4人が向かい合って座るタイプのものだ。しかし、固定式なので座席を動かしたり、リクライニングができたりするものではない。
僕がふだん乗るような電車は、いわゆる7~8人掛けのロングシート。ところが、青春18きっぷで鈍行を続けていると、こういった【固定式のクロスシート】に出くわすことがある。僕は極力誰もいない座席を選ぶのだが、結局あとから誰かが座ったりするものだ。僕はこれがなんだか苦手だ。
そんなところに!向かい側に同年代か少し年下くらいの女の子が座った。
逆を考えてみよう。
僕が電車に乗車するとき、まずは誰もいない座席を探す。こういう【固定式のクロスシート】の場合、誰しも1人になりたがるものだ。4人掛けのクロスシートだとしても、出来れば1人で座りたいだろう。自分がそうだもの。
しかし、そこそこ混みはじめると、やはり誰かと相席せざるを得ない。こうした場合、僕は若い女性との相席をなんとなく避けてしまうのだ。数ある相席の選択肢の中で、「あえて若い女性との相席を選ぶ」というのが出来ない。それだけで、下心があるように見られるのが嫌なのだ。
気にし過ぎかもしれないが、高校生のとき、広い電車の中、無意識に女性の横に座ったところ、その女性は僕が座るなり怪訝そうな顔で別の席に移動した……ということがあった。これはなんだか、キョーレツにショックだった。「電車の席が近いだけであからさまに避けられる」という、なんとも言えない事態だ。
当時高校生の僕は思い出した。
部活の顧問が口酸っぱく言っていた「相手の気持ちを思いやる心が大事」という言葉を。
たしかに、自分が女性だとして、わざわざ近くに男が座ってきたら、きっと何かを警戒するだろう。それに男がイケメンならまだしも、中の下程度の男(自己評価)ならなおさらだ。「相手の気持ちを思いやる」と、僕はそんなマイナス思考になってしまった。
あの時のアレにどういう意味があったのかはわからない。しかしアレ以来、座席を選ぶ際、若い女性との相席を避けるようになってしまった僕がいるのだ。
(めんどくせぇ男だ!)
―――――が!だが!
今まさに、数ある座席の中、向かい側に同年代の若い女の子が座るという出来事が起こったのだから驚いた。大げさだが、人として許容された気がして嬉しかった。
(正直、たかだかこの程度のことで一喜一憂している自分が「気にし過ぎ」だということはわかっています。わかっているんです)
その上、この4人掛けの【固定式のクロスシート】は向かいとの感覚が心なしか近く、ひざとひざが当たるのだ。なんてこった!無防備な女め!
ただ、この座席はどうしても向かい合って座るせいもあり、うっかり目が合ってしまうのも嫌だ。僕はスマホを弄る意外に選択肢が無くなり、スマホでオセロゲームを始めた。
しばらくすると、向かいの女の子はスースーと眠ってしまった!目の前で女の子が寝息を立てる状況なんて●●以来だ。い、いや、別にただ電車の中で寝ているだけなんですけどねっ。ただ、それがどうしても目の前なわけで、じっと見るのもためらわれるが、視界には入りこんでくるわけで。
……まぁ、そうした時間を過ごしていただけで、もちろんそれ以上の話はない。
次の乗り換え駅である塩尻駅に到着し、悶々とした時間を終えた。
これもまた、青春18きっぷらしいエピソードだと思っている。
(つづく)
甲府駅
旅の記事、いろいろあります。
「これさえあれば、1日中JRの普通列車が乗り放題」という、青春18きっぷ。この夢のようなきっぷが導くスローな旅には、「ちょっとしたドラマ」が詰まっています。
青春18きっぷであっちこっち旅をした時の話です!