福島県いわき市四倉地区に、「安全な米作り研究会」のメンバー白土武さんを尋ねました。一面に広がる緑の田んぼ。イネは尖った葉をピンと元気に伸ばしています。葉の間にはすでに稲穂も頭を垂れ始めています。モミの中の実(お米)もだんだん大きくなっているのでしょう。
緑が美しい四倉の田んぼで、白土武さんは今年の米作りと、これからについて語ってくれました。
安全でおいしい米作りへの挑戦は続いています。もちろん昨年に引き続き放射線量検出限界未満を目指しています。
実りの季節はもうすぐです。
福島県いわき市四倉での米作りインタビュー
動画撮影・録音:下重健児
(動画のテキスト)
――いわき市四倉戸田地区、白土武さんの田んぼにお邪魔しています。こちらのお米がとっても美味しいということなのですが、どういう風に美味しいのか教えていただけますか。
白土さん
「この辺は土壌がほかに比べて、作物を育てるのにいいということです。毎年米屋さんに米を販売するんですが、この辺の土地のお米は美味しくて評判がいいというような話は承っているんですけどね」
――原発の影響で昔からいたお客さんが減ってしまったというふうに、去年もお伺いしたんですが、今年はどうなんですか?
白土さん
「徐々にですね、我々がやっていることをPRしまして、徐々にですけど戻ってくれているお客さんもいますし、ただ、昔とは違うんだよねと、振り向いてくれないお客さんがいるのも事実です。
ただ、我々は限りなく有害なものを取り除こうということで、今までこの2年間やってきたんです。決して無駄じゃないと思うんですね。そういうことをPRしていけば、かえってこないお客さんもいるかもしれないですけど、それ以外に新規のお客さんも増えていくんじゃないかと。地道な活動をしていけば成果にも結び付くのかな、という考えで、いまやっているんですけどね。
原発が爆発したからもう農業遣りませんよってわけにはいきませんよね。我々、こうして土地を持っている関係上、これで生活していかなくちゃいけないということもありますし」
――去年は白米にした状態で、計っても出ない検出限界以下だったということですが、今年もそうしたかたちになりそうですか。
白土さん
「ええ、まあやってみないと分からないですけど、去年が出なかったのに急にぼっと出るということは、まず考えにくいと。この水田の方も、吸収抑制対策としてゼオライトとか塩化カリウムなどで防いでおりますので、田んぼの中からイネが吸収することは、まずないのかなと。限りなく少ないんだと思うんです。後はこの、用水路のところですね。入ってくる水を防ごうと、そういう対策をやっていますんで、二重の対策をしていますんで」
――去年よりもさらに対策をされているということですか。
白土さん
「これは教科書がないもんですから、どれがいいというものじゃないんです。我々はできる限りのことを、ただ金額的なこともありますんで、できるところからやろう、と。で、検査して出荷する前に安全を確認取ってからお客さんに渡そうと」
――去年もお客さんに渡すものに関してはすべて、一袋一袋、全袋検査をしてから出荷されたということですね。
白土さん
「福島県の方で全袋検査をしてから、なおかつ我々はお客さんに届ける分については民間の委託業者にお願いをして、測定値を付けて出荷しているということですね」
――ここのお米の美味しさを、食べた実感で伝えてもらえませんか。甘いですよね。
白土さん
「食味っていうのは人の感覚で、人それぞれなんですけど、ただあの、今年の収穫が終わった時に食味計という器械にかけまして、どれだけの数値が上がるのか。一般的には80%以上の食味計の数値が上がっていれば美味しいお米だという評価がされているんですけど、そういった数値もですね、それに満足するのではなく、いろんな作り方をして数値を上げていきたいですね。
我々生産者としては、お米を買っていただいたお客さんに、『いやぁ美味しいね、またお願いしますよ』って言われるのが一番の励みになるんですね。
だからあの、こういう原発災害がありましたけど、逆に、わたし的には農業をやる気になったと。その意欲が増したというですかね、そういった部分もありますね。
●TEXT+PHOTO:井上良太(ライター)