青春18きっぷを手にすると、どれだけ電車に乗っていても平気になってしまう。
--------------------------------------------------------------------------------------- ■青春18きっぷ
・JR北海道からJR九州まで、すべてのJRの普通列車が乗り放題になる。
(特急列車は不可)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
・使用期間は大まかに春、夏、冬。学生の休暇時期と重なるように設定される。
・5枚つづり11,500円で販売されるため、1日あたり2,300円で乗り放題。
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角度を変えて見てもやっぱり富士山は富士山
9月8日、土曜日、5時起床。
身体にはすっかり5勤2休の生活リズムが刻まれているせいか、土曜日に早起きするのはなかなかキツイ。
そんな気だるい朝を迎えてしまったものの、9月半ばの早朝はやや涼しげで、段々と目が覚めていく。出発駅の三島駅からは富士山の景色がうっすら見え、さらに駅前からはその富士山の湧水を思わせるせせらぎが流れている。
うん。爽やかな朝じゃないか!結局、後ほどたっぷりと寝てしまうのだが、朝に見る富士山は目の覚めるような清々しさだった。
そんな三島駅は富士山の南側にある。まずは三島駅から富士駅へ行き、今回乗る身延線(みのぶせん)に乗り換えだ。その身延線は富士山の西側から走りはじめ、やがて山梨・甲府駅へたどり着く。
三島に暮らすようになってからというもの、富士山は特別珍しい存在でもないのだが、それでも三島以外の場所から見る富士山となれば、やっぱり注目してしまう。特に身延線の西富士宮~沼久保間は「天気が良いと富士山がよく見える」ともっぱらの評判だ。
富士駅に到着し、そのまま身延線の甲府行きに乗り換えた。休日の朝ということで、人けもまばら。富士山に注目している僕とは裏腹に、乗客たちはみんな目を閉じて静かにしていた。柚木、竪堀、入山瀬、富士根、源道寺と電車はゆっくり進み、富士宮駅。ここでほとんどの乗客が降りてしまい、さっそく僕と数名の乗客になってしまった。
そして、それまで市街地を走っていた電車も、次の西富士宮駅を出るころにはグイッと方向を変え、景色は徐々に殺風景になっていく。そこで、ずっと注目していた富士山の姿がやっとお出まし。なんと言うか、こんなことを言ってしまえば元も子もないのだが、角度を変えて見てもやっぱり富士山は富士山だった。
ただ、富士山の周辺を飾る景色は、三島で見るそれとは全くの別物で、それがなんだか面白い。
肌で感じた微妙な変化を、wikipediaで答え合わせ
「静岡ってこんなに田舎だったっけ!?」
……なんて言えば怒られるかもしれないけれど、でもこれが率直な感想。身延線は西富士宮駅を発車して以降、雰囲気はがらり一変した。さっきまでは典型的な市街地を走っていたはずなのに、沼久保駅はまるで人けも無い。
電車もまた、景色に合わせてかなーり、ゆっくりなペース。色々と空気が変わった気がした。
こういう時(どういう時?)、なんとなしにスマホを取り出し、wikipediaで駅について調べることが習慣になってしまった。例えば、市街地を走っていた富士宮駅、西富士宮駅の1日当たりの乗車客数は1,000~2,000人程度だと書いてあるのだが、沼久保駅以降ガクッと減り、多くの駅が100人未満を推移していた。
だから何?と言ってしまえばそれまでだが、景色や空気の微妙な変化を感じるのが電車移動の楽しいところ。その肌で感じた微妙な変化を、wikipediaで答え合わせをするのだ。
電車もガクッとスピードが落ちたが、この身延線、富士~甲府間の88.4kmの距離を2時間半かけて走るらしい。つまり、仮に高速道路を走るとすれば1時間で済む距離なのに、2時間半もかかってしまうほど遅いようだ。
身延線の走る静岡・山梨両県は今でこそ車社会。しかし、かつては交通の便が極めて悪く、富士川を中心とした水運、つまり河川で繋がれていたらしい。そんな便利の悪さを解消しようと、鉄道(現・身延線)が敷かれることになるのだが、地形に合わせた複雑な線形にならざるを得なかったようだ。
さらに皮肉なことに、交通網が発達したことで人々は市街地へと流れ、……などなど。掘れば掘るほど、エピソードが出てくる。
そんな背景をスマホで把握するのもまた、不思議な気分でもある。スマホの便利さを感じつつ、電車の不便さを眺めていることのも妙な話かも知れない。身延線を走る電車は相変わらずゆっくりで、富士川沿いを走っていく。
(つづく)
沼久保駅
旅の記事、いろいろあります。
「これさえあれば、1日中JRの普通列車が乗り放題」という、青春18きっぷ。この夢のようなきっぷが導くスローな旅には、「ちょっとしたドラマ」が詰まっています。
青春18きっぷであっちこっち旅をした時の話です!