午後の日差しが波に乱反射する長須賀ビーチに、こどもたちの歓声が上がる。
「気をつけろよ! こいつ、凶暴だぞ!」
こどもたちが大人を追いかけ回す。ビーチ狭しと走り回って逃げるのは勝又三成さん。頑張るこどもたちと一緒になって、南三陸・歌津の長須賀ビーチ再生に取り組んできた頼れるお兄ちゃんだ。
午後3時、海水浴場のフィナーレを飾る風船が飛ばされてからというもの、
「疲れた疲れた」と口先でフェイントを掛けては、
1人ひとり大人たちを捕まえては、抱え上げて海へ走り、
胴上げに見せかけて、海へザブン!
こどもたちから大人たちへ、感謝の儀式が続けられていた。
多分、その最後の餌食となった男が、
海から起き上がるなりガッツポーズした!全身で。
南三陸で被災したこどもたちを沖縄に連れて行った時、
「地元、歌津の海で泳ぎたい!」という声が上がった。
じゃあ、自分たちで何とかしなきゃな。
その答えが、海水浴場再オープンだった。
大人たちの絶大なる協力があった。でも、この間のこどもたちの成長は、
「ハンパじゃない!」
海水浴場再オープンの前々日、勝又さんは言った。
むっちゃ大変なこと、一杯あった。大人の理屈という壁が幾重にも立ちはだかった。
でも最終的には、こどもたちだけじゃなく、地元の大人たちも、地元じゃない人たちも賛同してくれた。
多分、完成なんてことではない。
でも、ここに未来が拓かれた。
勝又さんの顔を見れば、
分かるだろ?
これが東北のガッツ。被災地の力だ。
完成形じゃない。来年も、再来年も、その次も。
地元に海を取り戻すための仕事は続く。
この底抜けの笑顔とともに!
長須賀ビーチ
南三陸町歌津
●TEXT+PHOTO:井上良太(ライター)