信じられない検査結果
原発事故で放出された放射性物質は田畑の土に付着しており、それが植物の根から吸収され、農作物にも移行するため福島の農作物は危険で食べられないだろうと思われました。
ところが、農作物を検査してみると農作物には、ほとんど吸収されていないのです。
大根、ニンジン、キャベツ、白菜、ほうれん草、ねぎ、ジャガイモ、なす、きゅうり、かぼちゃ、サトイモなど検出限界未満(ND)で研究者も驚きました。
安全な理由
早速、原因究明が始まりました。研究機関によると、土壌の成分により放射能の吸収は、全く違うことがわかりました。
原発事故で放出された放射性物質の主なものは放射性セシウム(セシウム134、セシウム137)ですが、土壌中の粘土成分は、放射性セシウムを捕まえると離さない性質があります。土壌中の放射性セシウムを、粘土成分がしっかり捕まえて離さないため、作物にはあまり吸収されないのです。
福島の農作物は、土壌は粘土が多いため、放射能の影響が少なくてすみました。
そのため粘土成分が少なく、砂が多い土壌では注意が必要です。
セシウムは水溶性なので、水田では特に注意が必要です。畑の野菜より水田の稲のほうが放射性セシウムを吸収しやすいのです。
100Bq/Kgを超える米のとれた水田は、砂が多かったことが、後でわかりました。
ゼオライトという鉱物も放射性セシウムを吸収して離さないことがわかり、散布することが推奨されています。
そしてもう一つ、土壌中の肥料分が高いと、放射性セシウムは、作物にあまり吸収されないことがわかりました。農作物に肥料を与えることで、さらに放射性セシウムの吸収を抑えているのです。
チェルノブイリ事故で、放射能を良く吸収したひまわりは、日本ではあまり効果がありませんでした。
チェルノブイリでは、土地がやせていたので、ひまわりは放射性物質をよく吸収したのですが、日本では土地が肥えているため、あまり吸収しなかったのです。
(畑などに植えられたひまわりは、養分が豊富で見事に大きく育ったものの放射性セシウムは、あまり吸収せず、土手などに植えられたひまわりは、小さくて貧弱ながらよく吸収したのです。)
その肥料成分はカリウムです。植物の生育に必要な三大養分の一つであるカリウムとセシウムは似ているため、カリウムが少ない土地では、似ているセシウムを吸収します。カリウムが豊富な土地では、セシウムは吸収しないのです。
カリウムの効用が明らかになり、農林水産省では放射能対策として、カリウムを多めにまくことを推奨しています。
放射能対策として、カリウム、ゼオライトの散布が進んでいますが、さらに土壌の酸性度に注目が集まっています。酸性度が高い(酸性が強い)とセシウムの吸収が増え、低い(酸性が弱い)と吸収が減るので、カルシウムを散布して酸性度を下げることが検討されています。(稲は弱酸性で育つ植物なので、中性の手前の微酸性が望ましいようです。)