「島での課題は多く、日々の仕事も忙しい。島の人々と意思の疎通ができているかと言えば、まだその自信はないからそこも課題」
山地さんのお話を初めて聞いた日の、山地さんの台詞です。最前線で活動している方の偽らざる本音は、確かに存在します。
それでも、それでも、この島の強力なパワーは、たった数日の滞在ながらビシビシと感じました。島の人々みんなが、手分けして作業に明け暮れる姿がありました。温泉や食事に、島の恵みを感じる生活がありました。子供から長老まで、自分が島で見てきたものを伝える気持ちがありました。何もない島を、自分たちの手で存分に楽しむ力強さがありました。それはすべて人口およそ150人の口永良部島で起きていることです。
島の活性化のために、移住・定住の促進は不可欠だと思います。それでも、
「今すぐ、移住・定住という話ではない」
と、山地さんが言うように、まずはこの島の暮らしを知り、体感すること。そしてそこで、何でも良いから自分の「可能性」を見つけること。この手順無くして、この島に住むことは恐らくできないと思います。
とある口永良部島に関する資料にて、山地さんが「口永良部島に生きる理由」が書いてありました。元々は友人の結婚式を機に、偶然訪れただけの口永良部島。そこで見た素晴らしい自然。そして素晴らしい自然があるにも関わらず過疎化が進む現状。その現状を変えるため、自分にできることは何かを問い、島に生きることを決意した。とあります。何もない島に、山地さんは「可能性」を見つけたのだと思います。
湯向集落のへきんこ亭新館のほか、本村集落にも移住・交流体験用の施設が整備されており、間もなく使えるようになると聞きました。この島から「可能性」を見つける第一歩として、僕が参加したような移住・交流体験はきっと大きいはずです。そして、「やりたいことはなんでもできる」この島にはきっとその「可能性」が詰まっています。
「僕はこの島の代表のような存在で語られがちだけど、そんなことは望んでないんです。僕はこの島を舞台にして勝手に色々演じているだけですから」
山地さんだって、元々はこの島に縁もゆかりもない移住者のひとり。山地さんの挑戦は「口永良部島の活性化」に繋がっていくのですが、それは口永良部島が挑戦の場としての魅力に溢れた島だからこそだと思えます。