口永良部島を訪れてみようと思ったのは、昨年(2012年)の12月、都内のイベントにて山地竜馬さんとお会いしたのがきっかけです。「島の暮らしを考える」というタイトルで、小さな地域での持続可能な社会について考えるという内容でした。単身で移住し、「150人の島に仕事を創る」ことを目指して一般社団法人「へきんこの会」を立ち上げた山地さん。ちょうどそのころは離島振興(地域振興)活動に興味を持ち始めていたので、現場で活躍されている方の想いを伺うには絶好の機会だったのです。
お会いするまでは、地域活動におけるリーダー像と言えば、「清々しいほどのプラス思考」というイメージがありました。なんとなくそういう人を多く見てきたんだと思います。ところが、山地さんはそういうイメージとは少し違いました。
口永良部島は火山と温泉に恵まれた素晴らしい島。しかし、人口の減少は進み、「島で仕事を創る」という理想には程遠い。課題は多く、適切な打開策も見当たらない。それでも頑張るしかない。そんな本音が見え隠れしていたのは事実です。ありがちな「うちの地域はこんなに元気にやってます!」とアピールするようなリーダーではなかったのです。まるで飾ることの無いその内容は、現場を知る人間だからこそ話せる生々しい話でした。
ここで気になったのは、山地さんもまた移住者ということです。島生まれの島民ならまだしも、自ら島に飛び込み、その上で苦労を語ることは容易ではないと思いました。また、
「人口を増やし、地域活性を目指すビジョンはあるが、気軽に『ぜひ口永良部島に来てください』とはまだ言えない」
という言葉も印象的。ずっと僕の頭の中に残っていました。離島振興を学ぶにあたり、現場を知らなければ何ひとつ語れないとも感じました。島での生活やその姿を、実際に見てみたい。「機会があれば」でしたが、必ずいつか口永良部島に行ってみよう。この時、僕はそう決めました。
そして、その機会は割と早くに訪れます。山地さんが代表を務める「へきんこの会」が「150人の島で暮らす」ツアーを組んでいたので、思い切って参加することにしたのです。