数年前、僕はラブホテルと呼ばれるレジャー施設で清掃のバイトをしていました。ラブホの職場環境は「面白いと思えば面白い、特殊と思えば特殊、普通と思えば普通」という何とも不思議な感覚があります。このシリーズ?では謎の多いラブホテルの舞台裏に少しずつ迫っていきたいと思います(脇汗)。
山の天気と女心は変わりやすい?
僕が勤めていたラブホテルは山道を2kmくらい登った先の山奥にありました。昔から「山の天気と女心は変わりやすい」と言いますよね。仲のよかった女性でも、鼻毛が1本伸びていたせいで嫌われる・・・。こんな経験を持つ人もいるのでは?山の天気も女心と同じように変わりやすいものです。
特に夏の天気は変わりやすく、急な夕立や通り雨が降ったと思ったら30分後には晴れている。こんなことが頻繁に起こります。自宅からバイクで通勤していた僕は、不安定な山の天気に悩まされました。家を出たときは晴れていたのに、ホテルに着いた頃にはズブ濡れということも・・・。山道を走っていると突然豪雨に襲われるのでレインコートを着る間もありません。
駐車場は断崖絶壁、一歩踏み外せばあの世逝き!
従業員の駐車場はホテルの立つ建物の奥にありました。山側に面した駐車場は崖の上にあって、その崖は60℃以上ある急斜面でした。おまけにガードレールは一切なく、一歩アクセルを踏み間違えば崖に落ちてあの世逝き!運がよくてもリアルでインディジョーンズの世界に巻き込まれるでしょう。
家の車を借りて通勤したとき、誤って前輪の片方が崖に脱輪して冷や汗をかいたことがあります。慌ててギアをバックに入れて難を逃れたものの、落ちていたらちょっとしたニュースになったと思います。
山奥の冬は地獄、ストーブがなければ凍死する
山奥の冬と言えば極寒です。僕がいたホテルのスタッフルームは、ホテルの敷地内の中央に独立した形で建てられており、出入り口にドアがないので寒気が部屋に入り放題でした。ほとんど外に近い状態なので、隙間風はバンバン入ってくるし、体感温度は氷点下を超えるほどです。
頼みの綱は石油ストーブ1台。待機時間はみんなでストーブを囲んで暖まります。ストーブで不便のなのは灯油が切れちゃうこと。フロントの人が予備の灯油を買い忘れてしまったときは最悪です。そんなときは、空室を開けてもらって客室で寒さを凌ぐときもありました。
満室のときは逃げ場がないので、生命を維持する装置を自前で作る必要があります。自分が開発したのは『足湯』と呼ばれる手法。バケツにお湯を満タンにはり、バスクリンを入れてミニ温泉を作ります。足元を温めると体全体がポカポカするので快適でした。N店長に「お前は野猿か!?」とツッコミを入られたけど、「寒くて死んじゃうんですよ!」と反論して納得してもらいました。
真夏の体感温度は40℃を超える、密閉空間は灼熱地獄
周囲を山林に囲まれている山奥は、涼しそうなイメージもあります。しかし、ホテルの夏は違いました。スタッフルームはホテルの敷地内のど真ん中に建設されていて、360℃ぐるりと客室に囲まれています。山林の爽やかな風が吹き抜けることはなく、コンクリートとコンクリートの間に挟まれて密閉されています。真夏の体感温度は40℃を超えてました。
リネン室にある3台の扇風機をフル稼動させても、熱い空気をかき回すだけで効果がありません。頼みの綱はクーラーでガンガンに冷えた客室だけです。掃除を面倒くさがるスタッフも、真夏はむしろやる気が出ます。「早く開け~早く開け~~」と、客が帰ることを心の底から祈ります。
お客さんの会計が終わって客室の赤ランプが点滅すると、スタッフは速攻で客室に飛び込んでクーラーの冷風にあたります。部屋に入る度に「かいてき~か~いてき~~!」を連呼する女性スタッフのZさん(30代女性)の言葉は感情がこもり過ぎて笑えました。
Zさん:「かいてき~~!か~いてき~~!か~~いてき~~~!!」
・・・ってどんなに気持ちいいんだろ?