3月11日の光景。「がんばろう!石巻」追悼の集い

東日本大震災から2年。

3月11日。

あの日から731日。

見渡す限り建物が消えた門脇の町を、冷たい風が吹き抜けていきます。震災で亡くなられた方は、震災関連死も含めると1万8185人。いまもなお2668人が行方不明のままです。

いまから731日前のあの日。ここは、押し寄せる津波に建物の大部分が押し流され、奇跡的に残った2階の一角で数人の人々の命が守られたところです。がれき伝いに駆け付けた消防隊員たちの手で人々の命が救い出された場所。しかし、周辺では多くの人々が命を落とされた場所。

この場所を襲った津波の高さは6.9m。左側のポールの高さだったそうです。言い換えてみます。

2年前のあの日、この場所は、ポールの高さに達する巨大な津波に襲われていたのです。

2013年3月11日。

「がんばろう!石巻」の看板の前でも、慰霊の集いが行われました。

石巻市では市主催の追悼式典のほか、被害の大きかった地域の小学校などの会場で、追悼の集いが開かれました。ここ「がんばろう!石巻」の看板の前にも、200人ほどの人々が集まり、地震発生時刻の14時46分から、町に鳴り響くサイレンの音に合わせて黙祷を捧げました。

数カ月前に新たに設置された献花台に、多くの人々の手でたくさんの花が捧げられました。

複数の場所で追悼される方も多いようで、終了後にも花を手向ける人々の列が続きました。

「がんばろう!石巻」の看板は、震災の直後に被災した多くの人々を勇気づけるためにつくられました。木製の看板はいつか朽ち果ててしまうかもしれません。しかし、思いを受け継いでいくために被災地のがれきから起こした灯をともし続けています。

津波高さを示すポールを設置したのも、この場所を訪れた人たちに津波の高さ、恐ろしさを体感してほしいからです。

そんな追悼の会場の一角にテントが張られていました。強風のため天幕は外され、冷たい風に吹きさらされていましたが、そのテントからこんな声が聞こえてきました。

「冷えた体をコーヒーで温めてください。無料ですよ」

神戸の長田区からやってこられたボランティアの人たちでした。

3月11日。

あの日から2年。

「もう」なのか、「まだ」なのか、という問いかけがたくさんなされた一日。

勇気づけるためにつくられた看板に集まった人々の姿を見詰めながら、生きている私たちは生き続けていかなければということを思いました。

亡くなられた方々を悼む思い。辛さを分け合うこと。

津波の高さを直視して、自然を素直に恐れること。ともし続けられる灯を見詰めるまなざし。

そして差し出されたコーヒーのあたたかさ。

いろいろな思いや感情や現実を、無理して整理したりせずに受け入れたい。あれから2年という日。追悼の集いに参加させてもらった、外から来た人間は、そう感じていました。

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●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)