東日本大震災・復興支援リポート「600年の歴史。雄勝硯の伝統を守り続けていくために」

取材時間が終わりに近づいた頃、市雄さんが力を込めて話してくれたのは、機械のこと。加工を楽にスピーディにしてくれる機械に対しても、工夫や取扱いの注意が重要だという話だった。

市雄さんは震災前には木工用の工作機械を自分で改造して使っていたそうだ。現在の機械でも、使い方(母材の送り方など)ひとつで、すぐに刃がダメになってしまう。「たとえば、この刃は同心円の模様を付けるのに使うものなんだが、回転させて使うから刃の内側と外側で石に当たるスピードが違う。そういう細かいところを考えた上で、製品の加工を工夫する考え方が大切だと、俺は思うんだよ」

雄勝に残ったベテラン工人は、ものづくりの心をもった頼もしい人だった。

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●TEXT+PHOTO:井上良太(株式会社ジェーピーツーワン)