小笠原でグリーンフラッシュを見よう!【旅レポ】

グリーンフラッシュが見たい!

夕方になると、どこからともなく人が集まり始め、気が付けば数十人が展望台に腰かけていた。この三日月山展望台は、近くに気象庁の気象観測ドームがあることから「ウェザーステーション」という愛称が付き、気軽に「ウェザー」と呼ばれている。父島の夕陽の名所として知られ、標高は200m近いにもかかわらず、毎夕のように観光客や島民が集まるのだ。

2008年ごろ、長期滞在をしながら父島の宿で働いていた僕も、仕事が休みの日はよくウェザーを訪れた。

夕陽が綺麗なのは言うまでもないが、日中はクジラのブリーチ(ジャンプ)を眺めたり、船が出港する日には定期船・おがさわら丸を見送ったり、関わり方は人それぞれ。時には大口を開けて幸せそうに爆睡している人もいる。各自が好きなタイミングでこの場所に訪れ、好きなように過ごしているのだ。しかし、この場所が一番賑わうとしたら、やっぱり夕陽が沈む頃だろう。

父島の夕陽の名所「ウェザーステーション」、夕陽目当てに多くの人が集まる

ここに来る人たちは、夕陽が沈む前後になると決まってグリーンフラッシュの話をし始める。

グリーンフラッシュとは、夕陽が沈み切る直前、もしくは朝日が昇った直後に緑の光が一瞬だけ輝くという現象だ。夕陽は赤く、海は青い。それなのに、一瞬緑色に輝くらしい。

特に父島に限らず、全国どこでも見ることは可能らしいのだが、小笠原諸島や八重山諸島など、南の島々は特に見やすいという。とは言え、気軽に見られるものではなく、「空気が澄んでいる」「気象条件が整っている」といった条件が重ならなくてはならないらしい。それこそ、毎日通っていても、そうそう見られるものでは無いという。

しかし、このややこしい条件が、逆に夕陽ファンのハートに火を点けている気もする。なにせ、このウェザーには毎日のように誰かがいるし、毎日のようにグリーンフラッシュの話題が出るのだ。とくに、グリーンフラッシュを見たことがある人は、その時のエピソードやウンチクを得意げに話し、見たことがない僕らの心を揺さぶってくれた。

「いやー、ほんの一瞬なんだけどね。地球ってすごいよね!」

「ハワイではグリーンフラッシュを見ると幸せになるって言い伝えもあるらしいよ。」

むむむ。

「100回に1回、当たりが出るくじ引きに毎日挑戦する感じ。」

「あー、今日は見れそうにないな。さすがに雲が多いよ」

ウェザーからの景色は、果てしなく続く海と空しか見えない。だからと言って、確実に素晴らしい夕陽が見られるかと言えばそうでもなく、意外と雲に遮られることも多かった。夕陽が見えない場合は、また明日。肩肘張らずに何度も通い、良い夕陽が見えたら「今日は良かったね」。そんな感覚だ。

もちろん、夕陽がどれだけ美しく見えたって、グリーンフラッシュが見られるとは限らない。

「100回に1回、当たりが出るくじ引きに毎日挑戦する感じ」

というのが、島に住む友人A氏の言葉だ。

とは言え、僕だって父島に長期滞在して4か月近く経っていた。他の観光客と比べて何度もチャンスがあるはずで、だからこそ歯がゆい。昨日今日小笠原に来たばかりのお客さんが「今日グリーンフラッシュ見たよ!」なんて話をしていたときには、そんなに日ごろの行いが悪いのかと悩んだりもした(笑)

そして念願の!しかし・・・

しかし、思わぬタイミングで願いは叶う。1年後、今度は観光客として小笠原を訪れたとき、父島の隣、母島の名所「サンセットシアター」で見ていた夕陽が、緑色の光を放ったのだ。赤い夕陽からは想像できないほどの緑色に、思わず「おおおっ」と声が漏れた。

ところが、このサンセットシアターは、父島のウェザーと違って人がたくさん集まることはない。この日もサンセットシアターにいたのは僕ひとりである。

しかし、たしかに海は緑色の光を放った。放ったのだ!父島のウェザーではきっと歓声が上がったに違いない。あぁ、この気持ちを誰かと共有したい。せっかく見えたのに!

ううう。

父島「ウェザーステーション」

正式名称は三日月山展望台。父島・大村地区から車道が伸びており、歩いて行くことも可能(徒歩30分程度)。写真のように、人が多く集まる日も多い。

母島「サンセットシアター」

母島・静沢地区から上り坂を北上すると遊歩道沿いにベンチがひとつある。一見質素なこの場所こそサンセットシアターだ。母島ではもっとも綺麗に夕陽が見える場所だが、ウェザーステーションのように賑わうことはない。しかし、それなりにファンもいると思われる。

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