FIFAクラブワールドカップ2012が日本で開催されました。この大会は世界6大陸における選手権大会の優勝チームと、開催国における国内リーグの優勝チームが一堂に会して『クラブチームの世界王者』を決定します。欧州からはUEFAチャンピオンズリーグを制したチェルシーが、南米からはブラジルの名門コリンチャンスが参戦します。日本からはJリーグの覇者、サンフレッチェ広島がエントリーしました。今回はサンフレッチェ広島VS蔚山現代の対戦レポートをお届けします。
フィジカルとパワーの蔚山 VS 組織力と展開力の広島
2012クラブW杯5位決定戦は史上初のアジアクラブ同士の対決になりました。強靭なフィジカルと強烈なパワーを武器にして闘志を前面に出して戦う蔚山現代FC(ウルサン・ヒョンデFC)と洗練された組織力と創造的なパスサッカーを展開するサンフレッチェ広島。対照的なチームスタイルを持つ両者がどのような戦いを繰り広げるのか、非常に興味深い対決でした。
ゲーム序盤、出足の速い蔚山が先手を取る
試合開始から蔚山は持ち前のフィジカルとパワーを前面に押し出して、前線からフルスロットルでプレッシングをかけにきます。蔚山のチェックの速さに戸惑う広島は、中盤でパスが繋がらず思うようなボール運びができません。1トップの佐藤寿人はDFの執拗なマークを受けてボールが収まらず、チーム全体が押し上げられず、選手間の距離が間延びしてしまいます。
蔚山のプレッシングは予想以上に激しく、広島は最終ラインでパスミスを連発します。前半17分、イ・ヨンのロングフィードをキム・スンヨンがヘッドで落とすと、ラフィーニャがゴールに向かって突進します。ペナルティエリアで背後からプレッシャーを受けた水本はGK西川にバックパスを選択しますが、これがキックミスとなり西川の脇をすり抜けてオウンゴール!思わぬ形で蔚山が1点を先制します。
得意のセットプレーで同点に追いつき、ペースを取り戻す広島
前半35分、ゴール前30mでフリーキックのチャンスを得た広島は、森崎浩司が左足でGKとDFの間にピンポイントクロスを送ります。これに絶妙のタイミングで裏に走り込んだ佐藤寿人がヘディングシュート!GKに弾かれたこぼれ球を山岸が押し込んで同点ゴールを奪います。このゴールで落ち着きを取り戻した広島は、徐々に中盤でパスが繋がり始めます。全体的に前がかりでチェックをかけくる蔚山に対し、広島は蔚山が前に出てきた瞬間に背後にボールを蹴って裏を狙います。
後半11分、左サイドハーフの山岸が右足でニアサイドに速いクロスを送ると、佐藤寿人がペナルティエリア内で足を出し、僅かにコースを変えてゴール右隅に流し込み、逆転の2点目を奪います。更に後半27分、森崎和幸が中盤でインターセプトするとゴール前でフリーになった高萩にパス。DFとの混戦状態から粘ってボールをキープした高萩は、裏に抜け出す佐藤寿人に絶妙のスルーパス。佐藤がこれを冷静にゴール左隅に流し込んで3点目!後半ロスタイムに蔚山に2点目を許すも、広島が3-2で勝利を収めました。
単調な攻めを繰り返し、怖さのなかった蔚山の攻撃陣
196cmの超大型フォワード、キム・シンクウにロングパスを出してこぼれ球から2次攻撃を狙っていた蔚山ですが、広島DFのタイトなマークの前にその存在感を失いました。ストッパーの水本やファン・ソッコに上手く体を寄せられると競り合いに勝てず、前線でボールを収めることができませんでした。一発のロングボールと個人のドリブル突破に頼った蔚山の攻撃は単調で、注意するのはセットプレーから意表を突いたイ・グノのヘディングシュートだけでした。
Jリーグ得点王MVPの佐藤寿人は伊達じゃなかった
この試合、2ゴールの活躍で広島を勝利に導いた佐藤寿人。蔚山のDFにあれだけ激しいマークを受けながら、全てのチャンスで決定的な仕事したのは流石です。蔚山にしてみれば、佐藤さえ抑えれば広島の得点力は半減することは分かっていたはずです。MFの高萩や山岸は佐藤の動き出しに合わせて絶妙のタイミングでラストパスを出していました。このホットラインは研究していても決して止めることができない領域に達しているように感じます。1トップという重責を担いながら、34試合で22ゴールを挙げた佐藤の決定力は驚異的です。
総括
サンフレッチェ広島は世界第5位という成績でクラブW杯を終えました。最終戦で佐藤寿人が爆発して勝利を得ることに成功しましたが、もう少し早い段階で広島の形が出ていれば更に上位を狙えたと思います。組織力とパスワーク、そして佐藤寿人という3つの武器でJリーグを制覇したサンフレッチェ広島。次回大会では更なる活躍に期待したいと思います!