とある日曜日の翌日、宮城県石巻市、田代島にて1泊することになった。ところが、かける宿かける宿電話がつながらない。もしくは、つながったとしても断られてしまう。前日の急な予約、月曜日に1泊、しかも男性客1人。なかなか対応しにくいのだろう。相手の事情を思えばそれも仕方がない。しかし、どうしたものか。
「・・・おっ、ようやくつながった。」
笑顔の素敵な田舎のばあちゃん
「あれー!あっだ今どごにいんだぁー?」
「あっ、違うんです。泊まりたいのは明日です。」
と僕。・・・しまった。そりゃあ、最終便の船も終わって暗くなった夕方に「泊まるところを探しているんですけど・・・。」とだけ言われれば、心配もするわけだ。
それにしても、開口一番「あっだ今どごにいんだぁー?」はびっくりした。その手前に電話した宿が「生憎その日はワタクシども休業日でございまして。」なんてばか丁寧だったもんだから、そのギャップが面白く感じた。
田代島・民宿海浜館。自前のHPもなく情報も少なかったのだが、1泊2食付、直前のお願いにも関わらず快く応じてくださった。
そんなこんなで翌日、月曜日。9時発の便で石巻港から田代島へ。
多少道に迷ったものの、無事、海浜館にたどり着いた。いかにも海の資料館のような名前だが(?)、見てみるとごく普通の民家。宿主は洗濯ものを干していた。
「あー、無事にこれたね!」
笑顔の素敵な田舎のばあちゃん。文字通り、これが第一印象になった。
通された部屋は広く、旅館を思わせるような雰囲気。ただ、食事やトイレで建物を行き来するとわかるが、本当におばあちゃんの家に遊びに来たかのような、そんな気分になる。天気が良かったのもあってすぐに出かけたが、行くときには「行ってきまーす」と声をかけて出て行った。気分は孫である。
まるで祖母と孫
猫と遊び、島内を歩き、最後はとある島の方へ取材を行った。そうしているうち、周辺はすっかり暗くなってしまったようだが、取材先でのお話が盛り上がってしまい、いつの間にか時刻は17時30分をまわっていた。
「あの、すみません。海浜館の奥さんから電話ですよ。」
「あっ!!!」
話に夢中になっていると取材先のご主人の奥さんから声がかかる。僕は二重に驚いた。まずは時間をすっかり忘れていたこと。遅くなると連絡をしておくべきだった。そして何より、行き先を告げていなかったにも関わらず、僕がお邪魔したその取材先へ電話をかけて下さったことだ。うわわわわ。
取材先のご主人のご厚意で車に乗せてもらい、海浜館へ戻った。
「すみませーん。すっかり遅くなってしまって。」
「あれー、心配したよー。この島は暗ぐなっの早ぇがらさ。たぶんあそごにいんだろうと思って、電話しだのよ。」
にこにこした顔で出迎えるばあちゃん。それにしてもよぐわがっだなぁ。おっとと。
そんなばあちゃんに「ごめんなさい」と謝る僕はすっかり孫の顔である。とは言え時刻は18時過ぎ。夕食には決して遅い時間ではなかったが・・・、
「いやーあんまりにもお腹すいだがら、先に食っちまっだよ。」
そう言って笑うばあちゃんは、すっかり祖母の顔のように見えた。
民宿海浜館
料金:1泊2食付7000円~、アクセス:仁斗田港から徒歩15分、問い合わせ:0225-98-2321 、休み:不定休(要確認)
※ 田代島には食堂が無く、商店もひとつしかありません。商店ではカップ麺なら買えますが、昼食は持参をお勧めします。
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