サワーソップ(シャシャップ、トゲバンレイシ) - 沖縄、小笠原でもレアな存在【変わった果物】

ずっしりと重い・・・、冷凍・・・?

 小笠原諸島のとある宿に住み込みで滞在していたころの話です。 9月下旬だったとはいえ、さすがは南国。暑く、しかも前日の雨でムシムシとしていた。遊びに出かけたお客さんは海で大いに楽しむわけだが、さすがにスタッフとして、掃除や洗濯をこなすには快適とは言えなかっただろう。オーナー含めスタッフも、この日ばかりは「暑いね」「暑いね」「こうも暑いと嫌になるね」と話していた。

 ひと仕事を終え、一時休憩しているとオーナーに呼ばれた僕。調理場へ向かうとオーナーが何やらでかいものを手渡してくれた。それはタオルで巻かれて中は見えないが、ずっしりと重く、3~4kgは優に超えている。タオル越しだが表面は凹凸を感じ、しかしそこまでごつごつとしている印象も無い。大きさは両手で抱えてちょうど良く、スーパーのメロンを少し縦長に大きくしたような輪郭。これってなんだか、まるで・・・、 「これ、冷凍庫の奥で冷やしといて。」

冷やす?こんな大きいものをしかも冷凍。・・・なるほど、オーナー、ついにやっちゃいましたか。この暑さですからね。わかりました、こいつを誰の目にもつかないほど奥底に冷やしてきます。まな板の上には肉切り包丁と赤く染まったまな板。僕は全てを察すると冷凍庫の奥・・・ 「底はだめ!それ果物なんだから・・・!」

 「ええええええええ!!!果物ですか!?」

大きく育てば8kg前後!?

 サワーソップという果物をご存知でしょうか。南北アメリカ大陸の熱帯地方が原産と言われ、国内では沖縄県や小笠原諸島で細々と生育しています。 なんと言っても、目を引くのはその見た目!まるで人の頭ほどの大きな塊で、トゲがびっしり。バンレイシ科バンレイシ属であり、その特徴的なトゲから、「トゲバンレイシ」とも呼ばれています。小笠原諸島では、サワーソップが訛ってか、皆「シャシャップ」とも呼んでおり、小笠原ではこちらも一般的。僕も普段はシャシャップと呼びます。

 重さは小ぶりなもので2kg前後、大きく育てばおよそ8kg前後にも及ぶ巨大な果物です。その重さを知ると、とても果物には思えませんが、木の幹からぶらさがるように成るそれは、紛うことなき果物。いやしかし、まるでジャングルで獲物を仕留める仕掛けかと・・・。 (小笠原諸島、母島のサワーサップ)

2つのポイント

大半が水分!トロピカルな味わいでジュースにすると美味!

 見た目の"ずっしりさ"とは裏腹に実はその大半が水分。冷凍保存をしたのは水分が多いために、常温だとすぐ熟れてダメになってしまうからでした。本土ではあまり見ない大きさとその保存方法に、思わず感動したのを覚えています。

 包丁を入れると、中は海綿状で白の綺麗な果肉と果汁がいっぱい。味はヨーグルトをベースに、パイナップルやリンゴの酸味を加えたような味。ほのかにクリーミーですが、意外とあっさりしています。小笠原で食べた時はフォークを片手に皆でついばみましたが(笑)、果肉よりも、絞った果汁をジュース感覚で飲むのが海外では主流の様子。冷やして運動のあとに飲むとさっぱりしそう・・・!?(wkipedia「Soursop fruit」より)

島でもレアもの!食べられるとラッキー!?

 小笠原諸島には複数回訪れ、滞在日数を合計すると半年を越える筆者ですが、サワーソップを味わったのはこの1回のみ。

 そうです。実は島でもなかなか見かけないレアな果物なのです。本来熱帯の植物であるサワーソップは、生育時は寒さに非常に弱いことで知られています。国内では沖縄、小笠原諸島で育てられていますが、日本では南国と呼ばれるこれらの場所も、サワーソップにすれば大したことはないそう。沖縄本島あたりの緯度だと、暑さが足りず、生育が芳しくないこともしばしばあるとのことです。・・・そうかと思えば、収穫後はむしろ暑さに弱いのも面白いところ・・・ですが。 その大きさから結実も容易ではないそうで、ひとつの樹から沢山獲れるものでもなく、あの大きさですから南国を襲う台風も苦手です。それゆえ、島でも入手は容易ではなく、すぐに熟れてしまうため、農協に並んでもすぐに売れてしまいます。

 これらの島々自体、なかなか行ける旅先ではありませんが、さらにこんなレアな果物も存在するんです。出会えるとラッキー!?それだけで、自慢できますよっ!