モンステラ - 完熟してようやく食べられるクセモノ【変わった果物】

南国の「幻のフルーツ」

どちらかというと南国感あふれる観葉植物

 モンステラという果物をご存知でしょうか。恐らく、普通に生活をしているとまず食べる機会のない果物です。もしかすると、人によっては観葉植物としてその名前を聞いたことがあるかも知れません。南国感あふれる艶やかな幅広の葉が、愛好家の間では人気なようです。 観葉植物としてそれなりに愛用されながら、果物としてはあまり知られていません。とうもろこし程度の大きさで、六角形のウロコ状のものがびっしり。初めて見た時はさながら「大き目のわさび」という印象を抱きました。

 見た目の通り熱帯性の植物。国内では石垣島や、小笠原諸島などの南国で細々と作られており、運が良ければ買うことも可能です。それゆえ、島の農協では「幻のフルーツ」などと謳って売られることもしばしば。

(バナナ + パイナップル) ÷ 2=?

 味はよく「バナナとパイナップルを足して2で割ったような味」なんて言われます。この見た目から想像するのは難しいですが、実際、南国を代表する2大果実に近い味。 「じゃあぱくぱくイケそうだね!」と思いそうですが、しかしそうでもありません。モンステラの特性を理解しなければ、食べるのも簡単なことではないからです。

 食べるには、1.『必ず完熟した状態で』2.『3~4日かけて食べる』ことが絶対条件なのです。 「一体どんな果物やねん!」って思いますか。思いますよね。以下にポイントをまとめました。 

2つのポイント

1.必ずめくれてから(完熟してから)食べる

 ひとつは必ずめくれてから食べると言うことです。つまり、自分のタイミングではなく、モンステラ側のタイミングで食べるということ。 というのも、未熟果の状態では、ウロコ状の果皮はとても手ではめくれません。ところが、それを常温で数日放置しておくと、果皮が徐々に反り返り、まるで抜ける直前の乳歯の如くおぼつかない状態に。そうすると、めくれた箇所から熟れた果実が顔を出し、そこから食べられるようになるのです。

 元々の見た目とは打って変わって、南国フルーツらしい、さわやかな酸味を帯びた香りがふわっと抜けます。 

2.シュウ酸カルシウムに注意する

 完熟してから食べるもう一つの理由がこちらです。実はこう見えてサトイモ科のモンステラ。モンステラが持つ特徴として、シュウ酸カルシウムを含む点が挙げられます。 シュウ酸カルシウムとは、国内の法律では劇物に指定されており、粘膜などに触れると痛みを伴う成分。我々に身近な植物ではサトイモやパイナップルにも微量含まれます。

 そして、とうもろこしのように縦長のモンステラは、箇所によって熟すスピードが違うのも特徴。つまり、熟したところから果皮がめくれていきますが、未熟な部分はそのままなのです。従って熟したところから順番にゆっくり食べ始めると、食べきるまでに2~3日ほどかかってしまいます。 

ほんの出来心で悶絶・・・

 筆者に食べる機会があったのは、小笠原諸島に滞在中の頃。島の農協で「幻のフルーツ!」なんて書かれているものだから、つい惹かれて買ってしまいました。

  買ってしばらくは果皮もびっしりと固く、めくれる気配すらありませんでしたが、1週間ほどすると急に柔らかくなり、食べられそうな予感が・・・(!)。し かし中の実は、白色が黄ばんだような、黒ずんだような色で、お世辞にも綺麗とは言えない見た目。つい不安になって滞在先の宿のオーナーに「これ、いたんで ないですか?」と聞いたほどでした。 ところが、食べてみると・・・甘い!!確かにこれは「バナナとパイナップルを足して2で割ったような 味」!!見た目とは裏腹に柔らかい甘さがあるのです。熟して見た目の悪い部分でこれだけ甘いのなら、白くて見た目の良い部分はどうだろう・・・。

 ほんの出来心、軽い気持ちでめくって口へ。「ーーーっ、痛い!!痛い!!!」「あー、その状態だとまだシュウ酸カルシウムが抜け切ってないみたいだね。俺はもう少し待ってから食べようっと」と、オーナー。その時初めて、シュウ酸カルシウムの存在を知りました。先に言ってよ・・・。