立て、立つんだ
小学校5年生の時の担任は当時すでに定年間近で背中のやや丸い、僕らから見ればもう「おじいさん」だった。家ではお坊さんもやっていた。
悪いことをした奴がいると、手にカーッと唾を吐いて、背中をバーンと叩く。痛さよりもその唾がいやでいやで、みんな逃げ回っていた。でもなぜか足が異様に速くて、すぐに追いつかれる。俊足の老僧侶。怖いでしょう。
そんな感じの先生なので、授業もあまり楽しくない。となりの5年3組からは楽しそうな笑い声が聞こえてくるのに、この4組ときたらいつもなんとなくどんよりとしている。
問題を黒板に書いて
「じゃあこれがわかる者!」
と言って手を挙げる人が少ないと、少しキレ気味でになって、こう言うのだ。
「全部立て!」
みんながやれやれまたか、という顔で立ち上がると、次はこう言う。
「わかるものは座れ!」
で、わかる人が座る。「わからない人は立たされている感を味わう」とかいう狙いでもあったんだろうか?毎日毎時間繰り返されたこの茶番。いったいなんだったんだろう(笑)。
で、結構な確率で「立っている田中」が指名されたりした。だーかーらー!わからないんだってば(笑)。
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