――NGを突きつけるべきなのに無理やり肯定して社会を歪めている。思い当たる人は多いのでは?
とにかく暴力を受けたら脱出です。離れないとダメなんです。不登校の場合はそれが逆のバージョンで起きる。先生とか同級生から何か暴力的なことがあって子どもは本能的に離れようとするけれど、親は学校に戻そうとする。学校復帰が良いことと信じているから。それでも「残念ながらあなたは傷ついています。どんなに美化しようと学校で我慢して理不尽な感覚を学んだのは暴力をうけたのと同じです」と言われても、言われた方はすごく嫌な気持ちになる。無理に暴力を肯定することで歪みが起きる。しかも全国で一律に起きている。それが社会全体の歪みになっています。
「親コミュ」で不登校児の親同士につながりを
――コロナ禍でマスクをしなくてもいい環境でもマスクを外さない子どもたちがいるのだとか。そんな窮屈な今ですが、大人へ一言アドバイスをいただけますか。
子どもは大人よりルールの厳しい中で過ごしていますから、子どもが自分の気持ちを伝えたらまずそれをまっすぐ受けとめてほしい。不登校に関して言えば「学校行きたくない」という子に対して、大人は何やかや意見するのではなくて「わかった」と一言返すのでいい。不登校にさせたくないと先回りしていろいろ準備するのでなく、行きたくないと言った日から休ませてあげる。それだけでいい。
――石井さんは子どもの頃に習い事は塾以外に通っていらした?
小学生の頃は野球を。小4で塾に入るのを機にやめました。それと水泳を。今の子は習い事をすごくいっぱいやっていて小学2年生でも週6日習い事のスケジュールで埋まっている。「火曜の午後以外は友達と遊ぶ時間がない」という子もいるらしくハードスケジュールです。親は「遅れたら困るから」と。遊ばせるにしても親が立ち会って見ていないといけない。安全に遊ぶには習い事を入れないとならないという。習い事を抱えて日々追われていることに、私は疑問が残ります。何でもない時間を過ごしてほしいです。
――ぼんやりする時間や雑談こそ大切なのでしょうね。もっと無駄な時間を過ごそうって。
本当にそうなんです。学校、塾、習い事と一日の予定にびっしり入っているから、親も子どもとの会話が「あ、もう○○の時間だよ」「宿題終わったの?」というチェックになる。そればかりになると子どもだって息苦しい。何も予定のない時間をつくれば、子どもはアウトプットして自分の気持ちを根付かせられます。私がオススメしているのは寝る前の10分間。本人の話をただ聞く。寝たふりをして何も否定せずに聞いてください。
――横になって話を聞くことが大切な夜時間ですね。最後にこれからの活動でお知らせがあればぜひ。
6月から不登校の親がつながりをつくるオンラインコミュニティ「親コミュ」を立ち上げます。月額1000円(初月は無料)でLINE WORKSを使います。ずっと情報発信をしてきた中で、子どもの居場所以上に親のつながりが求められていると感じています。親が愚痴れる場、ちょっと知っているおかあさんに話を聞ける場、親のつながりを作れないかなと思っていました。コロナ禍で不登校もどんどん増えており、始めるなら今しかないと決めました。私たちがつながりの場を作るのは実に20年ぶり。今は気軽につながれる機能も充実しています。子どもが学校を渋ったり、何かあったら試しにこの「親コミュ」でつながってもらえたらと思います。不登校ならではのオンラインイベント、公開インタビューも予定。今度やるのは不登校でもOKという求人紹介です。すぐに働かなくても、どんな仕事があるか?を知ってもらえます。当面は参加メンバー1000人が目標です。
編集後記
――ありがとうございました!
不登校児童と親を勇気づけてもらえる言葉をたくさんいただけました。「不登校は不幸なことではないし、がんじがらめな学校に行きたくないと子どもが主張した時は、当然だよねと受けとめてほしい」…そんなふうにあるがままを受けとめる親の存在が必要です。社会とのつながりは、まず家庭から。子どもの育ちを応援するのは親なのだと改めて感じました。新サービス「親コミュ」を心待ちにしている方も多いはず。不登校を誇りに、新しい道を切り拓く親子がこれからもっと増えますように!
2022年5月取材・文/マザール あべみちこ
石井志昂 著
ポプラ社
定価 979円(税込)
発売日 2021/8/12
子どものSOSを見逃さないために。不登校新聞編集長が語る子どもとの向き合い方