自閉っ子の自主避難所生活訓練

娘が昨年初めて経験した学校での「宿泊学習」は、災害などで自宅に戻れない時、学校に泊まる訓練。家族以外の人と、布団やベッドではない環境で寝る避難所生活の練習でもあります。

しかし今年は新型コロナウイルスの影響で学校行事が軒並み中止になってしまい、この宿泊学習も無くなってしまいました。すると娘の保育園時代からの友達家族から

「こんど3家族か4家族でキャンプ場の合宿所(という名の古い一軒家)に泊まるから、一緒に来てみれば?」

とのお誘いがあったので、うちの娘が重度の知的障害を伴う自閉症であること、足並み揃えて行動できないかも知れないことをみなさんに伝えてもらったうえで、思い切って参加することに決めました。

課題また課題

「思い切って」と注釈がつくのは

・大勢の知らない人と行動を共にする
・その人たちとひとつ屋根の下で過ごす
・大勢で野外で、そこにあるものを食べる
・寝袋で寝る
・夏だけど冷房なし

などなど、娘にとって難しそうな「課題」が揃っているからです。

しかも泊まるのはきれいな川沿いのキャンプ場。あの昨年のドキドキ

が甦ります。

また、他の子の元気な声が娘の苦手なタイプの声だった場合、長時間一緒に過ごすことで小さいパニックの頻発が予想され、他のご家族の楽しいキャンプ気分を邪魔してしまったら申し訳ありません。

…そう、正直言って少しの憂鬱と強い覚悟をしたうえでのお出かけでした。

驚きの連続

御殿場方面から来るご一行との合流待ち合わせ場所は函南ゲートウェイでしたが、娘がいつ機嫌を悪くするかわからないので、わが家は下の道をのんびり走りながら現地へ直接向かうことにさせてもらいました。

そして着いた最初の目的地は、有名な「土肥金山」のすぐ先の「龕附天正金鉱(ごうつき てんしょう きんこう)」というところ。

四百数十年前の後北条氏の時代に武田金掘衆が掘った竪坑の下へ、天正5年(1577)より横から斜坑を掘り進めたものではないかと考えられている、ほぼ当時のまま残されている伊豆最古級の手掘りの坑道跡です。

引用元:伊豆市 観光情報 特設サイト

友達一家3人以外、10名ほどのご家族と「初めまして」のご挨拶。子供たちは中学生から2歳児まで7~8人。娘からみんなに積極的に近づくことはありませんが、大勢の前でも平然としています。ちょっとほっとしました。

案内の方のとても流ちょうな説明によると、この土肥にはまだ金はあるものの「含有量が少ないため掘れば掘るほど赤字」なことから採掘されなくなったそうです。

説明の後はその手掘りの坑道の中へ。狭いし暗いし、足元はごつごつした岩を削ったままの状態が続くので、さぞかし娘は嫌がるだろうなと思ったのですが…

なぜか興味津々。全然平気で歩き切ったのです。

結果から言ってしまうと、これが娘の快進撃の始まりでした。

初めての人たちと初めての食堂

お昼ごはんは田子という漁港です。

高く屈強な波除けの壁が印象的
「いけますこのラーメン」の表情。チャーハンも食べました。言っとくけどお店の名前は「さかなや食堂」な

アクアシューズとゴツゴツの磯

次の立ち寄り先は堂ヶ島のトンボロ(干潮時に道が現れ、沖の岩や島に渡れる)。

合宿所とファミリー寝袋

そして最後は仁科川沿いの山道を15分ほど登ったオートキャンプ場に到着。

なんと娘は昭和感たっぷりの合宿所に何の躊躇もなくズカズカと上がり込んで

終始ニコニコどころか、ゲラゲラ声を出して笑っています。

写真はありませんが、夕食のバーベキューではほかの子たちの賑やかな声を嫌がることなくニコニコと目で追いかけて、タマネギのまる焼きやジャガイモの蒸し焼きを食べまくり。

夜は初めてのトイレに対して自らの存在感を誇示するかのように、そそり立たんばかりのうんち。時間の都合で風呂に入れずシャワーさえ浴びられませんでしたが、これまた初めて使うファミリー寝袋なのに爆睡してくれました。

翌朝は最近めっきり食べなくなったはずのおにぎりをパパママの分まで欲しがるほど食べてから、海へ出発。まったくミラクルの連続です。

ディープ、青い海、海海

土肥海水浴場など西伊豆の近隣ビーチはだいたい8月1日オープンだそうで、きょうはどこで泳ぐのかなと思っていたら、伊豆を知り尽くしている同行のご家族から「カーナビで落居(おちい)海岸を目指してください」との連絡が。

そこは西伊豆をすぎて南伊豆町。「海岸へ行くのになぜこんな細く急な坂道を『登る』んだろう?」と不安にかられ(帰りにわかったのですがカーナビがへっぽこだった)、最後は大型車が来たらすれ違えないのではという細めのトンネルと橋を抜け、「落居海岸」に到着しました。

伊豆に長いこと住んでいるわたしも初めてその名を聞いた海は「常連さんばかり」のようなプライベート感あふれるディープなスポット。

長雨のせいか海の青さはいまひとつでしたが、娘はここでも元気ブンブン。