広島を知る休日(9)

広島県と愛媛県からアクセス可能な大久野島。うさぎに会える島として人気のスポットですが、そこからは想像がつかないような戦時中の遺構が島内に点在しています。

船が到着した桟橋から歩き、まずは発電所跡を見学。そこから再び桟橋に戻り、時計回りに島を巡っていきます。

途中、アスファルトで舗装された道路を歩くこともあります。この道沿いでもウサギが近づいてきてくれるのですが、この道は宿泊施設の送迎バスが通るため、たとえ道路脇であっても過度なふれあい、餌やりは厳禁です。

しばらく進むと自動車、自転車専用道路と歩行者ルートに分岐します。その先にたくさんのウサギが待っているので、道路上ではふれあいたい気持ちを抑えながら安全第一で行きましょう。

ウサギの視野、視力

ウサギにペレット(ウサギ用のえさ)をあげていて気付いたことがあります。

最初のうちは数羽近づいてきたところにペレットを置いてそれをウサギが食べるという方法をとっていました。しかし、ウサギは地面に落ちたペレットをほとんど食べてくれないのです。最終的にはそのペレットを拾い、手のひらに乗せてそのままウサギの口に持っていく方法になったのですが、なぜ最初の方法で食べてくれなかったのでしょうか。

後々考えてみると地面に置いたペレットはウサギの視界には入っていなかったのだと思います。ウサギは広い視野を持っていますが、その一方で視力が低いことでも知られています。実際触れ合ったことでによる個人的に意外な発見でした。

大久野島毒ガス資料館

海沿いを歩き、少し内陸へ進んでいくとレンガ調の建物が見えてきました。

島で毒ガスを製造した過程で多くの犠牲者を出すに至ったこと,この痛ましい事実を今に伝えるため,関係各位からよせられた当時の資料を展示して毒ガス製造の悲惨さを訴え,毒ガス兵器をこの地から絶滅させ,平和な世界の確立を希求しています。
大久野島毒ガス資料館は,広島県,関係市町並びに障害者団体のご理解とご協力により昭和63年に建設されたものです。近くには,大久野島毒ガス障害死没者慰霊碑が昭和60年(1985年)に建立され,安らかな永眠を祈願すると共に,恒久平和を念願しています。

引用元:大久野島毒ガス資料館紹介

日中戦争が開戦した昭和12年から製造に拍車がかかり、大久野島では16年という長い期間をかけて毒ガスが量産されました。製造に合計6,500人もの従業員が関わっていたとされており、その中には16~19歳の強制労働者も多く含まれていたのだそうです。いまだに後遺症に悩まされている方もおり、化学兵器の恐ろしさを感じます。

日に日に記憶が薄れていってしまう中で、毒ガス製造が始まる前の大久野島から知ることができるこの資料館の存在は貴重なものだと思います。

展示室と会議室のような大部屋(講話などに使われるのでしょうか)があるのみで、こじんまりとした小規模施設。

丁寧な説明が添えられた写真パネル、当時(毒ガス製造時)の防毒マスク、工場で働く作業員が使用していた手帳など貴重な資料が多数展示されています。

ちなみに館内は撮影不可。写真は残っていないながらも、今も強く記憶に残っているが当時使用されていた完全防毒装備のマネキン。

全身を覆う黒っぽい作業服からゴーグル部分のみがむき出しになっており、あの不気味な感じはなんとも言えない姿です。

資料館の近くにはこんな建物も。
ここはかつて毒ガスの研究室兼薬品庫として使用されていました。

その隣には毒ガス製品の管理や機密書類の保管の他、毒ガスの検査が行われていた
検査工室があったのだそう。以前は、宿泊施設としても使われていたようで、そこまで古さを感じませんでした。

島内には他にも約50か所残っている防空壕跡地、毒ガス製造時代にも兵器置き場として使用された火薬庫跡など要塞時からの遺構も残されています。今回は島内の一部のみの見学でしたが、次回はきっちり1周したいと思っています。

新型コロナの影響で・・・

ちなみに見学したのは2019年の11月。
新型コロナウイルスが広まった今年はこんな問題も起きているようです。

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛を受け、観光客減少による大久野島(竹原市忠海町)のウサギの栄養状態を心配する声が上がっている。島を所管する環境省は、餌や水やりを推奨していないが、観光客から安定的に餌を与えられて約千匹に繁殖した経緯があるため。関係者は対応に苦慮している。

引用元:中国新聞デジタル ウサギの島、観光客激減で餌不足 竹原の大久野島

同ターミナルでは、通常200円で売っている餌を無料で配っている。島にやむなく渡る人に協力を仰ぐことにした。松本陵磨代表(34)は「もともとウサギの個体数が適正ではないとの意見もあり、正しい取り組みかどうか判断は難しい。ただ、今いるウサギが苦しむのは忍びないと考えた」と説明している。

引用元:中国新聞デジタル ウサギの島、観光客激減で餌不足 竹原の大久野島

毎便フェリーは満員状態で大半の人がペレットや野菜を持ち込んで楽しくウサギと触れ合っていたあの光景を思い出すと、信じられないような状況。

記事のとおり、エサやりにおける本音と建前やウサギの適正数に対する考え方などが絡んでいて、難しい問題であることがわかります。

この困難をどうにかして乗り切ってほしいという思いです。。。

前回までの旅の記録