2019年10月。日本に上陸する前の台風19号は「大型」で「猛烈」という最恐クラスにランク付けられ、「狩野川台風に匹敵する」と報じられてきました。
昭和33年の狩野川台風のことは知らなくても、子供のころから狩野川水系に親しんできた伊豆の人間にとって今回はまさに「狩野川は大丈夫か」ということに意識が集まった台風でした。
地元テレビ局とSNS
地元テレビ局では予定を変更して午前中から台風情報を放送。しかし県内のようすをまんべんなく伝えるため、伊豆半島の情報はその一部という扱いです。
ふだんから時々見ている「国土交通省・沼津河川国道事務所のライブカメラ」は、見たかった地点のうち1台しか映らなくなっていました。カメラに影響が及ぶほどの風雨なのか?と心配になります。
ここで有力な情報源となったのがツイッターでした。「台風19号、狩野川、黄瀬川、大場川、来光川」などのキーワードで検索すると、地元の方による投稿が入ってきます。
もちろん「狩野川台風なんか知らん」「狩野川ってどこ」など外の方のつぶやきも拾ってしまいますが、川の近くに住む人からの情報は貴重。写真や動画投稿にはくぎ付けになりました。
狩野川放水路、開放
ある人のツイートでは普段のどかな風景でしかない狩野川放水路を濁流が轟々と流れていく動画を見ることができます。こんなに荒々しい放水路の姿は初めて見ました。
またある人のツイートには狩野川河口から3番目の橋である御成橋(おなりばし)のすぐ下まで水が来ている画像があります。
「あれだけガンガン放水してて御成橋はこの状態かよ…台風が来たらどうなっちゃうんだこれ」
わたしはこの橋の近くで長く働いていたため、心配がつきません。
午後になると近隣でよく知っている地名に関して「避難勧告」にとどまらず「避難指示」も続々。狩野川だけでなく、狩野川に注ぐ多くの河川沿いにも水害の危険が迫っています。
そのとき娘は
養生テープが売り切れてしまうほどみんなが恐れていた「ガラスが割れるほどの強風」は幸い感じませんでした。しかしとにかく不安を増大させたのが「すごい雨がずーーーーっと降り続いている」ことでした。
スマホで見る1時間ごとの予報でも、1時間に30mm前後の猛烈な雨が朝から晩まで降り続くことになっています。テレビでは「氾濫危険水位」という言葉が目立つようになってきました。
わが家でもうひとつ心配なのが「気圧の変化に弱い娘」です。台風になるとわが家のママと自閉っ子ママ友の間で「うちの子あたまガンガン叩いてる」「うちもダメ」というようなやりとりがあるのがいつものパターン。でも今回うちの娘は意外と大丈夫でした。
それでも何らかの違和感があるのか表情はさえず、そしてとてもおとなしく、やがて自分で自分のスイッチを切るかのように、いつもより早めに寝てしまいました。これはこれで良かったと思います。
そして台風は通り過ぎた
わたしが情報をやりとりしていた初島、清水町、伊豆の国市韮山、長泉町などの友人知人親類の家ではいまのところ風水害はないようで少し安心。
22時ごろになると、風向きの関係か風の音はむしろ強まっていますが、雨はほとんど降っていません。ただしさっきまで狩野川上流に降っていた雨はこれから下流に流れてくるわけで、これから水位がどうなるか、まだまだ気は抜けません。
同級生の実家が冠水
するとここで同窓会グループLINEに「実家に行ったら道路が冠水してた」という写真が送られてきました。
すぐ先には狩野川。堤防をはさんだこのあたりの低い土地は昔から大雨で水に浸かることがある地区なので、膝まで水に浸かって歩く同級生は「久しぶりだわ」程度の感じでしたが、れっきとした冠水被害です。
必然パトロールに
翌13日は台風一過の快晴。前日どこにも連れていけなかったので、とりあえずは娘の大好きなラーメン屋さんへ。ここも狩野川のすぐ近くなので心配しましたが、通常営業していたので安心しました。
狩野川の水はまだ濁っているものの、水位は前日に見た映像よりは下がっています。
さてと、ラーメンも食べたことだし、知り合い宅の様子見を兼ねて山越えドライブしようかとカーナビを見ると、とんでもなく遠回りのルートを提示してきます。いつものルートが通行止めになっているのです。
仕方がないのでただ時間をつぶすためだけの近場ぐるぐるドライブを13日14日の2日連続で敢行。すると「茶色くなっている道路」が結構ありました。冠水したことを示す台風の爪あとです。
ハザードマップと冠水エリア、土地の成り立ち
近頃は地震による津波のハザードマップばかり見ていて洪水のハザードマップについてはノーマークでした。そこでこの機会にハザードマップと実際の洪水エリア、そしてその土地の成り立ちみたいなものを確かめておきたいと思い、簡単にまとめてみました。
ここから下は、各地区のハザードマップの中で「オレンジ色の線」で囲んだところがニュースやツイッターで冠水を知ったり、実際に車で走った時に道路が茶色だったところです(※「このへん」という大ざっぱなもので、具体的なエリアを示すものではありません)。
ハザードマップの下には国土地理院のサイトで見ることのできる「治水地形分類図」を並べ、今回の台風で冠水したエリアの地形(土地の成り立ち)を見ていきたいと思います。地形分類記号の意味は以下のとおりです。
沼津市大平地区
今回かなり広い範囲で冠水した沼津市大平地区。知り合いのお宅も床上浸水でした。
昔から大雨では冠水することのあるエリアで、ハザードマップでも広い範囲の洪水が想定されています。
地形分類図の色分けを見ると「氾濫平野」の「自然堤防」となっています。
「氾濫平野」ってなんだか社会派小説のタイトルみたいですね。意味は「過去の洪水によって作られた平野」だそうです。
農地、とりわけ日本人にとってとても大事な水田に適した土地ですが、近年は市街地になっていることも多く、豪雨のときには冠水の恐れがあります。
その中の「自然堤防」とは、平野を流れる河川が氾濫したとき、川沿いに堆積した粗い土砂が作ったちょっと高さのある土地です。
地名がそれを物語っているように、大平地区は山間に突然大きな平地が広がるところ。それは過去の氾濫によって形成されたんですね。