シリーズ「自閉症って、どんな障害?」第12回~言葉と歌~

ことし10歳になるウチの娘は重度の知的障害を伴う自閉症で、知能は1歳7カ月ぐらい。まだ言葉が話せません。

聞いた言葉をすぐマネする、いわゆる「オウム返し」は小さい頃からできましたが、「意味のある言語」として言葉を発することはまずありません。

それでも最近は人と別れる間際にまあまあの確率で「さよ~なら~」と言うようになりましたし、お腹が空いた時に「ごっはーん~!」、お風呂に入りたい時に「おっふーろ~!」と口ずさんだりするようになりました。

その時そばにいる人や場所、環境などによって「その時よく聞く言葉」を再現するのでしょうね。子供にとっての言語の獲得ってそういうものだと思いますから、少しずつそんな場面が増えるといいと思います。

そしてごくごくたま~に私に向かって「パパ」、妻に向かって「ママ」と言うことがあるのです!!

私も妻も「ハイハイハイハイ!いつも言ってくれたらなんでもあげちゃうよ♪♪♪♪♪」とトロけてしまいます。

しかし「もう1回言って!」と催促したころには本人の興味は別のところに行っていて、もう言ってくれません。本当にごくごくたま~になのですごくうれしいんですね。娘の優れた作戦です(*^-^*)

仏像でいう「光背」のような光をまとう娘。悟りを開いたのでしょうか(^^)

歌い出したら止まらない♪

言葉が話せない娘も音楽は非常に好きで、いつも何かを歌っています。これはついどこでも鼻歌を歌ってしまう私の遺伝なのかもしれませんが、いったん娘の歌心に火がつくと「大丈夫かこの子」と心配になってしまうぐらい歌い続けます。

冒頭で「オウム返しは上手」とご紹介したように「音として入ってきた言葉」は割と忠実に再現できるのです。が、回を重ねるごとにちょっとずつ怪しくなってきます。

母音とメロディは大事に。のはずだったけど…

娘の場合、何度も同じ歌を歌っているとだんだんいい加減になってきます。

最初は耳に入ってきたとおりに再現できたのに、やがて「母音だけしかあってない」「母音だけになっちゃった」「ハミングになっちゃった」「違う歌詞になっちゃった」と段階を踏んで原型から遠ざかっていきます。

やがて、とうとう唯一大切にしてきたはずのメロディまでおかしくなってきます。

「縮めちゃう」のです。

偶然ねこがらみ

最近よく歌ってくれる「犬のおまわりさん」を例にとると

正)「まいごの まいごの こねこちゃん」
娘)「まぎごご まぎごご ねこ!」

正)「こまって しまって わんわんわわん」
娘)「しまって しまって わんわん!」

となっています。もう一曲、春になっても娘が歌い続けている「ゆき」ではクライマックスがこうなります。

正)「ね~こは こたつで まるくなる~」
娘)「ね~こは こたつなる~」

ねこが寒さのあまりこたつと一体化しちゃいました。

娘が歌い出すと私も妻も心の中では「乗って」しまうので、このように短くぶっつり切られるとコントのようにコケそうになります(^^♪

日本人の血が騒ぐ

娘は1歳未満の頃からおよそ8年間も見続けている「Eテレのプロ」ですから、好きな曲もEテレで朝放送している子供番組のものが多いです(昔からなぜか「おかあさんといっしょ」にはまったく興味を示さない)。

とりわけ「0655」「シャキーン!」「みいつけた!」でかかる曲には聞くとノリノリになるものが多く、番組を録画もしていますし、DVDやCDも多数購入。クルマではかけっぱなしです。

これらの番組には数多くの一流ミュージシャンも楽曲を提供していますから大人のわたしたちも楽しめるのですが、昨夏あたりから娘が特に好きなジャンルが固まってきました。

それは「音頭」です。

鼻の下と前歯の間に舌を入れてゲコゲコと音を鳴らすのもブーム

そしてシンガー音頭ライターへ

あの太鼓のリズム、そして振り。これまでも「音頭もの」の楽曲を見聞きすると激しく手を振って喜んで(この時の手は犬のしっぽと同じ役目です^^)いた娘はとうとう壁を乗り越えました。「自分で作って歌う」ようになってきたのです。

「どんどん どんがどんが どどんがどん!」

はっきりとこう歌い、自分で手拍子をしながらとても大きな声で歌い始めるその音頭は、実はどの番組で聞いたものでもない、オリジナルです。

正確には「いろんな音頭を混ぜたもの」なのかもしれませんが、ともかく一緒にいろんな音頭を聴き込んできたわたしたち両親にもどの曲のどの部分かわからないフレーズをいつまでも大声で歌い続けます。

最近だとじいじの誕生日にとつぜん「どんどん どどんがどん!」と歌い出したので私と妻が手拍子を合わせて「ほい!ほい!」と促すと、音頭はさらにエスカレート。

歌詞はでたらめ言葉でメロディーも即興。そして何かにとりつかれたような迫力。思いがけず誕生日に音頭を奉納されたじいじは、口をあんぐりさせていました。

歌うように暮らそう

ちょっと昔に見ていたディノスのCMソングにこんな歌詞がありました。

「歌うように暮らそう それは小さなことかも知れないけど みんなの明日を大きく変えるよ」

つらそうな時もたくさんありますが、気分がいい時の娘はまさに歌うように暮らしています。

娘を見て「楽しそうだね」と言ってもらえるのは、わたしたちに対する最高の褒め言葉だと思っています。日本人の心躍らすいろんな音頭でご陽気に参りましょう(^^♪