まさかこんなことになろうとは

宅地の区画整理は完了した。今年に入ってようやく造成地の引き渡しも行われた。いよいよこの場所に、新しく気仙町の町並み、今泉の町並みが造られることになるんだなあと、まっさらの宅地を見ていてそう思う。

「ほら、あそこに一本松が見える。気仙川を隔ててアバッセもあんなに近い。大石の坂道も見える」

「そうなのよ、むかしは意識したことなかったけど、こんなに近かったのよね」

一足先に復興住宅に入居した人たちとそんな話をしていたのに。

まさかこんなことになろうとは、ゾウの鼻の滝のことを書いたときには思いもよらなかった。数日前、地元の新聞の一面に、造成した宅地で陥没が発生していることが報じられた。「ここに気仙の、今泉のまちが造られるんだ」と感慨にひたったその場所のことだった。

新聞によると、まずは原因究明に全力を挙げるという。他の場所では陥没などの不都合は起きていないらしい。この場所だけのことであってほしいと願う。

その一方で危惧を拭い去ることもできずにいる。

ブルーシートが掛けられた陥没現場で写真を撮っていたら、復興住宅から人が出てきた。話しかけようと近づいていくと、建物の中に戻っていった。みんな複雑な思いでいる。なんとか、まちの再建がうまく進んでほしい。でも、不具合が起きるような工事はしないでほしい。

みんな祈るような気持ちでいる。