一本松茶屋の駐車場に見慣れない白い箱のようなものが設置されていた。地震の揺れを体験するための起震施設? と思って声をかけてみた。
「すいません、これ何ですか?」
返ってきたのはこんな言葉。「どうぞ、中に入ってみて下さい」
「東日本大震災では多くの消防隊員が命を失いました。これは人々の命を守るために働く人たちを救うためのシェルター、つまり消防隊員の最後の砦なのです」
開発した有限会社エヌエー・メカニカルの中山政信さんが設置中のシェルター内部を案内してくれた。
構造が分かるように一部透明パネルになっている壁面がハニカム構造(蜂の巣のような六角構造)になっているのが分かるだろうか。中山さんによると壁の厚みは10cm。ステンレスのハニカムを組み合わせることで強度と軽量化を両立しているとのこと。その強さは防潮堤と同じレベル。水深30mに沈めても、巨大タンカーと衝突しても大丈夫なのだという。
シェルターの内部にはシートベルト付きの折りたたみ式の椅子、トイレ、厚さ40mmのポリカーボネート製の窓、外気を取り入れるためのハッチなどが設置されている。さらに、シェルターの下部には空気のボンベが格納されていて、センサーで自動的にシェルター内に空気を送り込む仕組みになっている。
上部のハッチの下にカーテンが吊るされているのは、簡易トイレを利用する際の目隠し。トイレの上にハッチがあって換気できるなど、細かい所まで行き届いている。
このシェルターの設置を進めている一般社団法人 持続可能な地域社会づくりイノベーション研究所専務理事の渡辺昇さんは、シェルターを開発するにあたって最優先にしたのは「強度」だったと明かす。
「陸前高田市では東日本大震災で51人もの消防団員が犠牲になりました。被災地全体では250人以上が亡くなっています。その悲劇を繰り返したくない。人の命を守る人々の命を守るのがこのシェルターの役割です。高価ながらステンレス製を採用したのはそんな考えによるものです」
「あの人が生きていたら」「オレなんかが生き残ってしまって」——
新しいまちづくりを進める町内会の若手からそんな言葉を何度も聞かされたことを思い出した。そのことを話すと渡辺さんも静かにうなずいていた。
ひとりでも多くの人を救おうとして津波に流された人たちのことを思う。悲劇を繰り返さないためにできることを、それぞれがそれぞれの立ち位置で進めて行かなければならない。
それぞれの3.11、晴れ上がった陸前高田で、一歩が刻まれて行く。