陸前高田市立高田東中学校は、東日本大震災で被災した広田中学校、小友中学校、米崎中学校の3校が統合して2013年4月に誕生した。これまで修理した米崎中学校を校舎として利用してきたが、1月16日の3学期の始業式から、新設された校舎で授業を始めている。
1月29日(日曜日)には新校舎の竣工式と、地域の人たちに向けての内覧会も行われた。残念ながら内覧会当時は参加できなかったが、翌日に所用で東中学を訪ねると、「昨日はいったい何人のお客さんが訪れたのか分からないほど、立錐の余地がないくらいに多くの地域の人たちが来てくれた」とのこと。旧・広田中学校出身の俳優の村上弘明さんも参加したそうだ。
学校は子どもたちの学び舎であるだけでなく、地域のまとまりを象徴する場所なのだと改めて感じた。
地元の気仙大工の伝統の技をほうふつとさせる大きな反りのある屋根が特徴的な新校舎に入ると、エントランスにはたくさんの木製書架が並ぶ。フローリングの床や内装も含め、鉄筋コンクリート一部鉄骨・木造ながら木のぬくもりが感じられる造りになっている。書架が並ぶエントランスの奥にはパソコン室。書架の資料とパソコンを行き来しながら調べ学習するのには最適だろう。
1年生から3年生までの教室が同じフロアに配置され、教室と教室の間にはラウンジのようなフリースペースも設けられている。3学年6クラスの教室が並ぶ廊下は全長100メートルもあるそうだ。
窓の外には再生が進められる高田松原から、広田半島につながる海岸線までが見渡せる。その素晴らしい景色の手前には広々としたグラウンド。
震災で被害を受けた米崎中学校を修復したこれまでの校舎ではどうしても手狭だったが、「これでようやく子どもたちに普通の中学生活を過ごしてもらえる環境が整った」と案内してくれた先生が話してくれた。
印象的だったのは、前日の竣工式での校長先生の言葉を引きながら話してくれたこと。
「校長先生もおっしゃていましたが、この春入学する新中学1年生たちはこれまで校庭というものを知らない子どもたちなのです」
被災した地域の小中学校の敷地は、仮設住宅の用地としても使われてきた。昨年あたりから仮設住宅の集約が本格化し、学校敷地内の仮設住宅は減少しつつあるが、震災からの6年間、つまり小学校の全学年に相当する期間を「仮設住宅のある学校」で過ごしてきた子どもたちが、広々とし校庭がある東中に新1年生として入学してくるということだ。
校舎からそのまま駆け出していって走り回れる校庭——。そんな環境を初めて知ることになる子どもたちが、どんなふうに成長していくのか。
「もちろん、これからも子どもたちの生活の中ではいろいろなことがあるでしょう。それでも校庭という学校にとって当たり前の場所が自由に使えるようになる子どもたちの未来が楽しみなのです」
真新しい校舎の2階の窓から、広いグラウンドを見つめる先生の表情にはあたたかさが溢れていた。
高田東中学校のホームページです。これまでの支援への感謝の言葉、校章に込められた意味。そして覚和歌子さん作詞、千住明さん作曲による校歌もぜひご覧ください。