被災した人たちの住宅再建を支援する岩手県の事業「いわて復興住宅祭」が陸前高田市では初めて開催された。
会場には県内のハウスメーカー(全国展開している企業も含む)や電力などエネルギー関連企業のブースが並び、個別の相談に応じていた。
林業に力を入れている岩手県ならではだろう、県産材を活用した住宅について情報提供する団体が3つのブースを出していた。県外からの移住希望と断った上で話を聞いてみたところ、木を使った住宅の利点や建築に係る費用、県産材の特徴など詳しく説明してくれた。
住宅の話を聞きにいった訳だが、話題の中心は「土地の入手が困難」「土地を手に入れてもいい材料を入手しにくい」「ここ数年が建築のピークなので少しずらした方が得策」といったことだった。
まずは土地の問題だ。津波で広大な土地が失われた被災地で土地が不足しているのは当然だが問題はそれだけではない。これからの町がどんな姿になるのかが見えない状況では、土地を選ぶこと自体が難しいというのだ。
たとえば買い物先のスーパーマーケットが現在の場所にずっとあり続けるかどうか。阪神淡路大震災後の神戸では、被災地に大型のショッピングセンターが進出し、地元の商店が壊滅。その後、ショッピングセンターも撤退し買い物の便が著しく低下するということがあった。人口減少が進む東北の被災地で同様のことが起きない保証はない。地元で「無料高速」と呼ばれる三陸道が延伸することで、商業施設の集約が都市間でも起きるかもしれない。今は便利な場所でも、数年後には毎日の買い物にも不自由する状況になるおそれもある。
つづいて建築のピークの話。
陸前高田では山を切り崩した造成地を中心に、新築工事が数多く行われている。新しく造成された住宅地では、M社やS社、I社など全国的に名の通ったハウスメーカーの幟旗が立ち並ぶ。大手が強いのは提案力があるからで、とくに家庭内での決定権を握っている主婦の心をキッチン周りのデザインでがっちり掴んで成約するケースが多いのだとか。
この手の話はまさに一般論に過ぎないが、住宅需要が短期間に集中する被災地では「ピーク後がチャンス」という話は興味深かった。現在は家を建てる職人も材料も不足しているが、数年後ピークが過ぎた後には、顧客にとって細かい希望を通しやすい状況になるだろうという観測だ。
たとえばフローリングに無垢材を使いたいといっても、繁忙期である現在なら「当社のプランにある材料からお選びください」となるだろうし、実際よりも割高になる場合もあるだろう。しかし、仕事の量が減ってくれば顧客を逃さないために業者も必死になる。必然的に顧客が希望する材を探して来てでも対応しようということになるだろう。とくに地元の中小規模の工務店ではその傾向が強いだろう。本来、人件費の占める割合の大きな大手より、中小工務店の方がお得なのだから、地元の工務店の中から対応力のあるところを選んで、じっくり相談しながら造ればいいとのアドバイスだった。
少し待った方がお得ということは、とりもなおさず現在はお得ではないということだ。しかし、早く我が家を再建したいという思いは切実だ。
住宅フェアで説明を受けてから、新築工事を見る思いが少なからず複雑になった。