【壊されゆくもの・つくられるもの】大船渡プラザホテル

解体が始まるとあっという間だ。1週間ほど前にはまだかつての面影が残されていたが、もはや外壁も一面を残すばかり。

復興の象徴でもあった明るい茶色のホテル

解体が進められている建物の名は、大船渡プラザホテル。震災前から大船渡市民に親しまれてきたが、2011年3月11日の大津波で建物の3階までが浸水し、従業員や宿泊客は屋上に避難して難を逃れたという。被害の最も大きかった地域の中心部に残された大船渡プラザホテルだったが、2011年末には営業を再開。復興工事やボランティアの宿泊施設としてフル稼働してきた。

三陸地方では宿泊施設が限られていたため、なかなか予約がとれないほど。プラザホテルの明るい茶色の建物は、大船渡の復興が進んでいることの象徴でもあった。

震災の前も、震災の後も、大船渡の町とともにあったプラザホテルだが、道路工事のため移転することいなる。2015年3月に建設が始まった新たなホテルは、今年3月12日に完成。そして、旧・大船渡プラザホテルとなった建物の解体工事が現在進められているわけだ。

旧・大船渡プラザホテルから百数十メートル内陸側に完成した新たな大船渡プラザホテルは、客室数約1.8倍、市内や大船渡湾を一望できるテラスや、大規模なイベントスペース、結婚式場などを備え、中心市街地再生のため大船渡市が進める「津波復興拠点整備事業区域」の開店第1号ともなった。

大船渡の町の中心部のいま

解体工事が進む現場周辺から、ぐるりと時計回りに周囲の様子を撮影してみた。

震災以前、ホテル周辺には道路沿いに商店街が続いていたというが、何棟かの大きめの建物の他は、更地かかさ上げの工事現場だ。

青い青い空の下、遠くの山々は初夏の日差しに緑が映える。

一方、自分が立つ足下から続く平地はむき出しの土色の工事現場が広がっている。

青空、そして緑の山並みとのコントラストが強すぎて眩しい。

そして土色の平地からはところどころに、災害公営住宅やビジネスホテルといった中高層の建物がぽつりぽつりと立ち上がっている。

奥が深い大船渡湾の対岸から、夕方この辺りを眺めると、中高層のビルの灯りが海の向こうに並んで幻想的に見えるほど。町の景色はたしかに少しずつは変わっている。

崩されゆく大船渡プラザホテル旧館と、すぐ近くに建てられた新・大船渡プラザホテルは、変化していくまちの象徴のようなものだ。

壊されゆくものとつくられるもの。復興あるいは復旧とはそういうことなのかと、現場に立つと実感できる。当たり前のことなのに「こういうことなのか」と改めて感じてしまう。

2016年6月。現在、大震災から6年目の日々が積み上げられている。