ペット連れ避難の話から引き続き――。
[熊本大地震]目に見えない格差
熊本地震では避難している人にワンちゃん連れの人をよく見かける。
その一方で、避難所の駐車場で車中避難している人がペット連れということもある。避難所の中がペットOKなのに、外で避難生活を送っているのはどういうわけだろう。ペットが周りの人に迷惑をかけることを気にしてのことなのか、あるいは建物の中に避難すること自体を避けたい気持ちがあるのか。
答えは意外なものだった。
「動物を連れて避難所に入ってもいいんですか? そんなの知らなかった!」
伝える努力をしなければ伝わらない
避難所の入口にはおびただしい数の貼り紙がされている。県営住宅への入居申し込みや行政サービス再開の見込み、医療チームからのお知らせ、さらには避難している人への呼び出しまである。しかし、すべての情報が掲示されている訳ではない。
こんなこともあった。ある小学校の避難所(校舎全体を避難所として使っている)に地元の牛乳屋さんから牛乳が届けられた。物流の混乱で出荷ができないので差し入れてくれたのだ。
200ml入りが300本以上。しかし消費期限はその日いっぱいとのこと。
避難所を運営する役場の人は、牛乳の差し入れがあったことを放送で告知した上で夕食といっしょに配布しようという。しかし、小学校のグラウンドには何百台もの車中避難している人たちのクルマがあって、中には子供もいる。校内放送はグラウンドでも聞こえるのか尋ねると、聞こえないという。それなら車中避難している中で子供がいるクルマはだいたい分かっているので配ってきましょうと提案してみたが、公平性の問題があるから無理だという。
そんなやり取りをしているうちに、ボランティア活動を切り上げる時間になった。車中避難している人たちには避難所のスタッフが周知して回るという話だったが、手伝ってくればよかったと後悔した。
混乱しているからこそ
現場は混乱している、という言葉だけではうまく伝わらないかもしれない。避難所に割り振られた役場の人たちにとっては、すべてが初めてのこと。マニュアルを読んでも、いま目の前にある現実に対応するのは大変だろう。とにかくやることが多い。小さな出来事の1つひとつに対していちいち判断を下していかなければならない。
情報が周知されていないという状況が生まれるのも無理からぬことかもしれない。
しかし、公平さを大切にする上で情報の周知は第一歩ともいえる重要な事柄だ。
ボランティア仲間にそんな話をすると、「初動における混乱は仕方がないこと。細かなことをあげつらうより、担当者が全体を把握するサポートをする方が大切」という意見もあった。
それが正論というものかもしれない。しかし、周知を心がける姿勢を持たないままに把握される全体とは、一体どのようなものになるのだろう? 心配だ。
東北の大震災では、自宅などで避難生活を送っていた人が、日に何度かは避難所に行かなければならなかったと教えてくれたことがある。理由は「情報」だった。情報は避難所で止まってしまう。わざわざ届けてくれたりはしない。食料よりも物資よりも何よりも、情報を撮りに行くことが大切だったと。
避難生活を送る人たちの中には、避難所までわざわざ情報を取りにいけない人も当然いるだろう。情報の周知から漏れた人が不利な状況や弱い立場に追い込まれることがないようにしなければならない。
重要な課題だと思う。
繁忙を極める災害の現地だからこそ、真剣に対策を考えなければならない。